リンカク 公演情報 下北澤姉妹社 「リンカク」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/05/16 (木) 14:00

    こんなスズナリ初めて観た!
    舞台奥から太い花道が伸びている。
    三方に客席が作られ、花道の途中には四角い穴があいている。深さは不明。
    気が付くと水が流れるような、雨のような音が聞こえてくる。
    開演前からホームレス風に厚着をした女性が登場、舞台上の石を床に投げたりしている。
    雨が降って来たのにはびっくりした。

    ネタバレBOX

    着物姿の女性が腰ひもで首を吊ろうとして失敗、ホームレスの女性に助けられて
    一緒に自分の家へ帰って来る。
    このホームレスの女性が、複雑な家族をシンプルにほぐしていく。

    別居中の夫婦、夫は要介護状態で内縁の妻と娘が献身的に世話をしている。
    着物の妻と息子は少し離れてそれを見守っている。
    だがそこには実に複雑な事情があった・・・。

    当日パンフに書かれた作・西山水木さんの言葉の中に
    「私はほとんど他人でできています」という一文があった。
    優しい人に囲まれてその気持ちがわかるから、自分と他人の境界が曖昧になって
    本当は自分がどうしたいのか、わからなくなってしまう。
    ”誰かの望んでいることが、自分の望んだことになってしまう” ということだと思う。
    自分が望んで選択したのだと思い込んでいる。

    謎のホームレス女性は、「それは本当にあなたがやりたいことではない」と強く促す。
    そして登場人物は皆真実に向き合い、自分自身を見つめて変化していく。
    ラストは、長いことリンカクが定まらずに苦しんできた者だけが得られる
    爽快感に満ちている。

    登場人物の住まいや、息子のネット配信などが、もう少し解りやすく描かれたら
    観客はもっと早く登場人物に寄り添えると思う。
    内容の普遍性、表現のイマドキ感がとても素晴らしいだけに
    チラシデザインなどに内容の深みが反映されていないように感じられて惜しい。

    作者の真摯な姿勢が随所に感じられる意欲作。
    役者陣のひたむきさが伝わって来る作品だ。
    ホームレス女性(倉品淳子)の力強さが作品の推進力のひとつになっている。
    言葉によって人間関係を失い、舞踏によって自己表現を得た
    リョウマ(永田涼香)の喜びが美しい。
    ラスト、感情を取り戻した麗羅(あさ朝子)の号泣に思わず私も泣いてしまった。

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    2024/05/17 00:17

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