きみどりさん 公演情報 東京ネジ「きみどりさん」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    その世界に馴染むと・・・
    冒頭は、舞台上の世界の唐突さにとまどったのですが、観ているうちに、自然にその時間に馴染んでしまう。

    すると、唐突だったものから鮮やかなリアリティがあふれ出し、舞台にあるものすべてが深く強くいとおしく思えるようになりました

    ネタバレBOX

    きみどりさんはもちろんのこと、
    登場人物それぞれの個性がくっきりと描きこまれていて・・。
    そのあけすけとも思える表現に
    最初はすこし戸惑う。

    でも、そのあけすけさこそが
    家族の雰囲気を強くしなやかに
    観る側に刷り込んでくれるのです。

    ジングルのように差し込まれるタイトルコールは
    まるで、作り手の記憶の看板のよう。
    今を起点に
    ミルフィーユのように重ねられていく時間たち・・・。

    家族を外から眺めるのではなく
    家族の内側に視座を置いて描き出されるその世界は、
    ときには露骨だったり、さらけ出されていたりもする。
    でも、それが表現されなければ
    きっと観る側にとっての本当にならない
    それぞれが背負うものや想いがあって・・・。

    きれいなばかりではないし、
    ごつごつもしているのですが、
    観る側は、そのなかでまだらに露出した
    隠されることのない
    コアの色にこそ浸潤されていくのです。

    あるがままにいるきみどりさんの
    抜群の存在感が観る側をしっかりと引っ張っていきます。
    ばらばらに見える家族のベクトル・・・、
    でも、それらが重なりあいぶつかり合いながらも
    個々を互いにあるがままに受け入れていく姿が
    ひとつの家族の実存感を作り出していく。

    理不尽とまでは言わなくても、
    常ならぬものを、
    そこにあるものとして受けとめていく家族それぞれの姿に
    観る側までがすっと染められてしまう。

    役者の演技に懐の深さやぶれない強さがあって、
    エピソードからあざとさのないニュアンスを
    絞り出していく・・。
    その一滴ずつが観る側の心をさらに染めていきます。

    心惹かれるシーンがたくさんありました。
    両親のプロポーズのシーンに目をうばわれ・・・。
    破り捨てられる一枚の紙から伝わってくる
    その人にゆだね、その人を受け入れる
    想いのリアリティに息を呑む・・・。

    異父兄弟の末っ子が育っていく姿にも、
    それぞれが互いに色を染め合う
    ありのままにある家族の姿がすっと膨らんで。
    二女がきみどりさんみたいな性格というのも
    なにかわかるような気がしたり。

    クリームソーダのエピソードは
    ペーソスを感じるほどに滑稽にも思えるのですが
    でも、そこからきみどりさんの薫り立つような
    横顔がふわっと現れる。
    彼女のうちにあるお洒落の感覚を注がれて
    彼女の人生が二次元の戯画から
    三次元へと膨らんだようにも思えたり。

    ラストシーン・・・、
    あのころの土曜日の夜に
    記憶が収束していくのですが、
    でも、きみどりさんのテレビから流れる
    その番組のように
    次の回がやってくれば、きみどりさんのジングルのとともに
    ふたたび記憶が巡りだすようにも思えて。

    初日ということで
    ほんの少しタイミングなどのずれなどを感じた部分もあったのですが、
    でも、描き上げたその世界は
    観る側をして作り手の世界を彷徨させるに
    十分な力があって。
    観終わって、
    どこか突き抜けた可笑しさを感じ、
    その可笑しさが愛おしさに変わる中で、
    さらにたくさんのことが
    心に満ちるお芝居でありました。

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    2010/07/31 12:05

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