満足度★★★★
リアルを再構成する時間。
個人史に依拠する土着性から史実を遡り、虚実交えて時間軸をクロスオーヴァーさせながら『リアルを疑う』ことに照準を定めた作品。
映像として纏めると回想シーン+ナレーションで終わってしまいそうなところを現代口語演劇的なダイアローグから能をモチーフにしたような動き、そして内省的なインタビュー形式のモノローグに至るまで様々な手法を用いた実験的で複雑な構成。
どちらかといえば素朴な語り口がソリッド感のある空間美に浸され演劇的な生々しさから遠ざかり、最後には無に帰化するような、観念的な一面もある。
あまり大衆的であるとは言えないものの、皮膚感覚で観るアート作品としては秀逸。