う蝕 公演情報 世田谷パブリックシアター「う蝕」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/02/17 (土) 14:00

    座席1階

    IAKUの横山拓也とミナモザの瀬戸山美咲という、今を時めく劇作家と演出家のコンビによる作品だけに注目度抜群の舞台。期待度は非常に高かった。被災という極限状況を扱った舞台だと「ハイツブリが飛ぶのを」がすばらしかったし、人里離れた山奥の生活を描いた舞台だと「モモンバのくくり罠」も胸に刺さる作品。いずれもきわめて緻密な会話劇で複数のテーマがクロスオーバーするという横山らしさ満載の作品だったが、今作は「不条理劇」と銘打ってある。いつものテイストとはかなりかけ離れた作品だった。

    まず、会話の間の沈黙が目立つ。特に冒頭の部分は、いったいいつ役者がしゃべり始めるのかとかたずをのんで見守るという感じだった。そして、ボケとツッコミはあるとしても会話がかみ合っていない。そこは不条理劇ならではの哲学的部分なのかと思うが、いつもの横山劇を想定していくとテイストは全然違うのである。

    これを新境地と呼ぶのかどうかは分からないが、きっと好みや評価は分かれるだろう。う蝕というのは虫歯という意味で、天変地異で地盤が虫歯のように欠けていくという世界を描いている。能登半島地震でも激しい地盤の隆起や沈下があったので、全く想像の世界というわけではない。しかし、こうした被災地を現場にした不条理劇というのは、客席からすると少し難しかったかもしれない。別役実の不条理劇を連想すると、やはりそれとはかなり趣は違う。個人の好みの問題ではあるが、自分は絶妙な会話の連続が織りなす高い物語性が横山作品の魅力と思っているだけに、「ちょっと違うかな」という印象はぬぐえなかった。

    演出はというと、幕開きの部分には度肝を抜かれる。舞台に引き込む力は抜群だ。ただ、その後は特に「これはお見事」という起伏はなく、演出的には淡々と進んでいく。やはり不条理劇なので、瀬戸山らしいところを発揮する部分があまりなかったのかもしれない。

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    2024/02/17 18:46

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