Re:カクカクシカジカの話 公演情報 非戦を選ぶ演劇人の会「Re:カクカクシカジカの話」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    行って良かった!
    実行委員からの嘆願メールに、重い腰を上げて、行きましたが、正直、大変驚きました。
    どうも、メッセージ色の強い、プロパガンダ的舞台を想像していましたが、きっちり、演劇として、面白い作品に仕上がっていました。
    今までは、永井愛さんや、渡辺えりさんだの、ベテラン劇作家が書いていたこのメッセージ演劇を、今回は、戯曲セミナ卒業生でもある、若手にバトンを渡したことが、好結果に繋がったようにも思います。

    一部の「Re:カクカクシカジカの話」は、若いに似ず、相当筆力あると定評の相馬杜宇さんの作、チャリT企画の主宰楢原拓さんの演出で、この2人が、実に驚くべき、力を発揮されていました。
    リーディングだということを忘れるぐらい、とても演劇チックな展開で、芝居の出来としても、決して他に、引けを取らない舞台になっていたのは、本当に驚きでした。

    この作品で、錚々たる大ベテラン俳優に囲まれ、驚くべき役者根性で、主役を好演された小山貴司さん!!一目惚れしましたが、丸尾さんの劇団の所属俳優さんでした。彼を知っただけでも、行った甲斐あり、でしたが、2部でも、知らなかった現実をずいぶん聞かされたり、3部では、つくづく演劇界の損失だと痛感させられた、井上作品にダイジェストながら、触れたりできて、本当に思わぬ感動舞台となりました。

    今日は満席でしたが、昨日はかなり入りが悪かったようで、こんなに良い舞台なら、もっと人に薦めておけば良かったと後悔しました。

    ネタバレBOX

    1部は、教授にレポートのダメだしを受けた大学生のマサトが、期限付きで、核の問題を調べて行き、当初はネットで調べていたのが、最終的には、自分の目で、たくさんの資料を読み進めて行く内に、自分自身の見解にたどり着くまでのお話。主役の小山さんや、チャリT企画の役者さん以外は、ほとんど見知ったベテラン役者さんの揃い踏み。これだけのオールスターキャストは、かつて観たことないかもしれません。
    中でも驚いたのは、演出家青井陽治さん扮する教授の美声。そう言えば、青井さんて昔は四季で役者さんもなさっていたのですね。

    核抑止論派は、黒の衣装、非核論者は、白の衣装で、動きもついて、朗読劇に感じる面映さは全くなく、これは演出の楢原さんの手腕かと、改めて、彼の演出力に感服しました。
    皆、役を演じる中にあって、実際の被爆体験のある、鈴木瑞穂さんだけが、御本人の役で、語られるのが印象的で、やはり圧倒的に、説得力を増しました。
    核を持つべきではないという、最初からのこの芝居の上演目的がありながら、この作品を、1人の大学生の成長物語として、しっかり骨組みを建てた、相馬さんの脚本力にも脱帽しました。

    実際被爆経験者にじかに話を聞きに行こうと、大学生のマサトが、朝鮮国籍の恋人と、広島の原爆ドームに行くと、それまで、白と黒の衣装に分かれていた登場人物が、皆色とりどりの衣装に着替えて再登場するラストシーンが、とても秀逸で、目頭が熱くなりました。

    2部は、えりさんと永井さんの司会で、ドキュメンタリー映像作家の鎌仲ひとみさんの映像作品の予告編を観てのトーク。この鎌仲さんが、語る、日本の知られざる現状に、背筋が凍る思いがしましたが、時間的には、この程度が無難だった気がします。これ以上、語られると、あまりにも、観客の意識を故意に誘導してしまう危うさを感じもしましたので。
    映像の字幕が、1部のセットの椅子で見難いところがあったのが、残念。準備不足だったと思います。

    3部は、戯曲セミナー卒業生で、井上ひさしさんに師事した石原美か子さんと、長田育恵さんの構成による、井上戯曲の追悼朗読。これが、また、井上作品常連役者さんの勢揃いで、珠玉の井上さんの名科白が、ダイジェストで、読み継がれて行く、贅沢な構成。
    どれも、心に響く科白ばかりで、改めて、偉大な作家を失ってしまったという喪失感に、胸がいっぱいになりました。
    ただ、教え子の、個人的気持ちが入り過ぎた感があり、もう少し、短く構成した方が、より、井上さんの思いを伝えたように思いました。後10分短くまとめた方が、より感動が濃くなったように思います。
    「井上ひさしの子どもにつたえる日本国憲法」の文章が、重く静謐に胸に響き、自分で、読んでみようという気にさせられました。

    3

    2010/07/22 03:21

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  • のべ様

    コメントありがとうございました。
    いえ、もう本当に、あなたの実力には感嘆しました。
    長男と、戯曲セミナー同期でいらっしゃるので、処女作の観劇もさせて頂き、その当時から、実力ある方とは認識していましたが、帰着点が最初から決められた芝居を、こんなにもベテランの役者さんが総出になる作品で、尚且つ、御自分のカラーをしっかりと出されて、台本を書かれたことに、本当に感動してしまいました。
    こらからも、益々その実力に磨きを掛けられることを確信し、期待しています。

    きゃる様

    そうなんですよ。意外にも、とても良い芝居を安価で拝見することができ、観ながら、きゃるさんもご覧になれたら良かったのにと思っていました。
    幾ら安価でも、観て賛同できなかったら、カンパはしないつもりでしたが、終演後は、迷わず、篠原さんの持っていらしたカンパ箱に、お札を入れてまいりました。(笑)
    劇作家協会の劇作家と、俳優さんの有志が、心を一つにして、活動しているので、私も、こんなことなら、セミナーに通い始めた年から参加すれば良かったかと後悔しました。

    2010/07/23 02:03

    第一部の台本を書かせていただいた相馬です。ご覧いただきありがとうございました。まさに「演劇として面白く」することを目指した作品だったので、楽しんでいただけたようで本当に嬉しいです。どうぞ今後ともよろしくお願いします。

    2010/07/22 14:15

    KAEさま

    これ、フライヤーを手にしたとき、すでに日程的にダメだったのですが、興味をもちました。行かれた人は・・・と探してたら、KAEさんのレビューに当たりました。演劇人がこういうイベントを開催できる世の中であってほしいと思っています。いまは演劇=左翼の時代ではなくなりましたが、渡辺えりさんはイラク派兵の際にもきちんと声をあげて署名活動されたり、同世代として頼もしく思っています。今回は井上ひさしさん追悼企画もあったみたいですね。

    2010/07/22 12:01

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