エネミイ 公演情報 新国立劇場「エネミイ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    通過点
    性別、年齢、家庭環境など観る人によって全く違った印象を与える
    作品だと思う。 テーマがテーマなだけに、「誰が間違っている」とか
    「誰が正しい」というのをひとまず置いておいて(あるいは観客に任せて)、
    ストーリーだけ投げかけた作品ですが。 間口は大きく広がったと思う。

    登場人物で、特に共感出来る人は残念ながらいなかったけど、
    観るべき作品だと思うし、観終わった後は共感、あるいは出来ずとも
    自分に近しいと思える人を舞台の上に発見出来る作品ではないかと。

    ネタバレBOX

    演出を蓬莱氏自身で無く、別の人、鈴木氏が手掛けたのは
    正解だったと思う。

    蓬莱氏は過剰というか、突き抜けてしまうのでテーマは心に
    突き刺さってくるのだけど、その分ものすごく疲れるから。。。
    鈴木氏の、基本大らかで〆るとこだけきちんと〆るという演出は
    バランス的によいと感じます。 蓬莱演出だったら、多分重苦し過ぎて
    二時間以上は耐えられなかったと思う。。

    内容は…一言でいうと、「依存する人たち」の話かな。。
    一家全員、来訪者の二人、山田、みんな何かに依存して、「それが
    私の生きる(進む)道」って感じで生きている。
    演出では相当抑えていたと思う部分だけど、結局そこが感じ取れたから
    誰にも共感出来なかったのかも。

    母親は明らかに父親と脱コミュニケーションなのに「お父さん仕事
    頑張った!!」って言っちゃう辺り、日本人だなぁ、と。 

    姉。 あんま重要じゃない役回りだけど、言っていることは一番現実的で
    よく理解出来る人だった。 何だろう、感覚が一番マトモだと思った。

    男四人。 うん、みんな同じようなものだね。
    それぞれが思うファンタジーの中、「敵」に向かって腕を振り上げて
    いるけど、その拳は「敵」、ならぬ「的」には当たらない。 

    だっていないもん、敵なんて。 
    自分がいると思っているモノと闘い続けるのって何よりも辛い。
    ファンタジーの中にいるから、互いが理解し合えない。 問題は
    そこにあると感じました。

    この中で一番礼二と歳が近いけど…
    彼がシフト表の話をし出した時、凄く真面目で優しく他人想いであることは
    痛いほど伝わってきたけど、正直「ふーん、それで?」と感じてしまった。

    彼の自己犠牲的に匂う部分がどうしても受け入れがたかったのもあるけど
    彼と、現実世界の深夜遅くまで頑張って仕事しちゃう入社したての社員とが
    ものすごくオーバーラップし、そこに昔の自分を見るような気がして。

    今だからいえるのだけど、↑のような感覚って結局「自分が」っていう
    思いが強過ぎるんだよね。 自信過剰というか、自己本位というか、
    最終的にはそこに行きつくし、やがては自分で気がついて脱却していく
    べき「通過点」だと思うから。 

    なので、ヨーロッパ旅行に誘われた礼二が断る気持ちもよく分かる。
    ヨーロッパ旅行より、今の自分にはやらなきゃいけない仕事があるから
    よそに目を向けられないという想いですね。 すごく生々しかった。

    でもそれは結局、自分を中心においている発想なんだよね。 
    余裕が無いし、「入れ込む人」というのは、まだ自分に自信が無い人の
    裏返しということもよく分かっていると思うから。

    でも、断言出来る。 彼は必ずヨーロッパ旅行に行くし、三里塚にも行く。

    父親の、「年をとって一番辛いことは、昔のことを正確に伝えられない
    ことだ」というのはすごく名台詞。 一番心に響きました。

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    2010/07/17 07:48

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  • はじめゆうさん

    >演出を蓬莱氏自身で無く、別の人、鈴木氏が手掛けたのは
    正解だったと思う。
    >蓬莱氏は過剰というか、突き抜けてしまうのでテーマは心に
    突き刺さってくるのだけど、その分ものすごく疲れるから。。。

    なるほど! と思いました。私は気がつきませんでした。

    ただ、礼二のことは、少々感じ方が違っていたようです。彼はまだ「自分の居場所を確認している」状況にあると思いましたので。

    2010/07/20 07:49

    はじめゆう様

    こんにちは。2回目のコメントになりますので、「初めまして」は、省きます。

    いつも、的確で、正直な御感想、大変楽しみに拝読しています。
    今回の御感想も、概ね、同感するところばかりでした。

    特に、ネタバレ欄で触れていらっしゃる、父親の名台詞、私も、あの言葉が一番胸に響き、「そうそう、その通り」と1人、相槌を打ってしまいました。

    もしかしたら、劇作を志していらっしゃるのではと、想像したりもいたしますが、とにもかくにも、これからも、はじめゆうさんの御感想、拝読するのを楽しみにしています。

    2010/07/17 09:43

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