検察側の証人 公演情報 俳優座劇場「検察側の証人」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    1984年12月9日の日曜洋画劇場、『アガサ・クリスティの検察側の証人』が放送。1982年製作のTVドラマ版。今作にもの凄いインパクトがあって衝撃の結末としてこびり付いている。原作の小説を読み、名作と誉れ高いマレーネ・ディートリッヒ版の『情婦』も観た筈だが全く記憶にない。ファースト・インパクトが凄すぎたんだろう。あの時の衝撃を求めてもそれはもう無理。ウォーレン・ベイティの『ディック・トレイシー』でもマドンナが似たような役をやっていた。
    今回もやはりあの時の衝撃を求めていたが、確認する作業になってしまったのは仕方がない。

    だが初見の人には絶対的にお薦めする。
    全く情報を入れずに観に行って欲しい。
    創立79年劇団俳優座、六本木駅前の俳優座劇場は2025年4月末日に閉館。正念場に立つ老舗劇団が34年振りに絶対的自信作を世に問う。
    これを観ずしてミステリーを語るなかれ。
    逆にまだ未見の人が羨ましく思える程。
    オリジナル中のオリジナル、必見。

    重厚な役者山脈。舞台美術も小道具も文句の付けようがない。この座組に入れるだけで誇れる。
    主演の法廷弁護士は金子由之氏。
    付き従う事務弁護士に原康義氏。
    二枚目の容疑者に釆澤靖起(うねざわやすゆき)氏。
    そのドイツ人妻に永宝千晶(ながとみちあき)さん。
    被害者の家政婦は井口恭子さん、流石の腕前。
    凄腕検事に志村史人氏。「んんんんん」とウイッグを弄る癖だけで観客がどっと沸く。
    法廷書記は武田知久氏。『犬と独裁者』のソソ役が強烈。普通に何をしても目立ってしまう異才。
    法律事務所秘書の音道あいりさんはかなり印象を残した。

    MVPが永宝千晶さんになるのは当然。小池栄子っぽい貫禄。彼女と観客の戦いになる戯曲なのだから。
    何度でも観たい作品。

    ネタバレBOX

    ミステリーの女王、アガサ・クリスティの1925年発表の短編『検察側の証人』。犯罪者が罰せられないことを非難され1953年戯曲化の際、更にオチが付け加えられた。それが自分には不満で蛇足にしか思えない。
    1957年ビリー・ワイルダー監督が『情婦』として映画化。その後も延々と作品化され続けている。

    妻の自己犠牲的な純愛が胸を打つのだが、それすらも男に欺かれていたエピローグがつまらない。どんでん返しの為のどんでん返し。逆に文学性を損ねてしまい作品の質を落とす。こんな屑男を愛してしまった女の哀しさが主旋律なのに。

    契約的に戯曲を弄れないのだろうが、容疑者と妻のドイツでの出会いなど映像化したいシーンは多々ある。ドイツ女が大戦後イギリスで生きることの辛さなど、想像するに余りある。ただのどんでん返しものとするには惜しい。

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    2023/10/22 21:47

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