だから君はここにいるのか【舞台編】【客席編】 公演情報 階「だから君はここにいるのか【舞台編】【客席編】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    第12回せんがわ演劇コンクールグランプリ受賞公演。
    昨年はコンクール参加ということで、【舞台編】だけを40分の時間(コンクールの規定)で上演したが、本公演では55分と少し長くなっている。その時間だけ やはり物語における状況が分かり易くなっている。そして【客席編】と併せて約2時間の公演、どちらも観応えのある二人芝居、これぞ<小演劇-真骨頂>と言えるもの。

    どちらの作品も劇場が主体となり、そこに現れる舞台の関係者が紡ぐ話である。その劇場で上演されるであろう架空の公演チラシを配付するという手の込んだ演出、笑えた。また共通しているのが照明…どちらもモノトーンで舞台上の役者(心情)に焦点をあてている。
    (上演時間各55分 休憩兼転換10分)

    ネタバレBOX

    【舞台編】
    昨年のコンクールを観た時の感想は次の通り。
    「冒頭は、観念的といった印象。舞台は、劇場の公演準備前の舞台。仕込みが遅れている舞台上で、一人の俳優が、スタッフのために缶コーヒーを両腕に抱え待っている。と、台本の台詞を正確に喋る見知らぬ男が現れる。その台詞は、舞台上にいる俳優が喋るはずだったもの。すでに削除され無になった台詞と台詞がなくなって出番が無くなった俳優が いつの間にか同化してくる不思議感覚。劇に登場しなかった登場人物(台詞)とその役を演じるはずだった俳優の物語はシュール。他方、台詞とは誰のためのものか?観客に向けてであれば、観客不在の前説は何なのか。スタッフが声のみ出演という劇中内の前説アナウンスが笑える。」と記した。

    今回の【観客編】と併せて観ると、その面白さは倍加する。やはり両作品あって、その相互作用が演劇としての深みを増す。

    今回観て補足する。
    1人の男が 上演前に口笛を吹き 鼻歌を歌いながら舞台装置を調整している。「満月だったんですね、今夜。だからこんなに明るいんですね」(満月伝)という台詞がなくなって、出番がない<缶コーヒーを持つ男>がスタッフ業務をしている。そこへビニール傘を持った<ヒーローに見えない男>が客席通路から現れる。台詞がないヒーローとは、その存在価値を巡る問答を通して人の悲哀が浮き上がる。<缶コーヒーを持つ男>が話す 暗闇での自分犠牲の他者救い の例え話に納得する<ヒーローに見えない男>。
    登場しない主人公は、映画「桐島、部活やめるってよ」を連想し、最後まで存在が気になった話題作だったが…。

    【客席編】
    舞台は、幕が閉じたままで、客席前方の2列を舞台に見立て紡いでいく。舞台関係者という男と観劇2度目という女性観客(客席通路から登場)との二人芝居。男は、「沈黙の森」(再演)を観に来た彼女に向って、再演と言っても まったく同じ作品が上演されるわけではないと。暫し演劇論、やがて例え話のように 森の中の木が倒れた音を聞いた、いや聞こえないと言った比喩問答へ変転する。舞台上から見える光景と、客席から見える光景は違う、その相容れない位置関係を同一視するため、彼女を舞台にのせ客席側に椅子を向ける。

    <三日月を背にする男>と<A-6の女改めA-5の女>の奇妙な会話は、女の恋愛話へ。前に観た時同様、自分の隣席に別れた彼?が座るかも、そんな願望を<再演>へ込めたかのよう。まるでヨリを戻せるかのような。
    さて前説のアナウンスに、携帯電話の電源はオフに…など聞き慣れた説明のほか、「お客様の姿は、劇の登場人物には見えておりません。上演中は、劇の登場人物に話し掛けたりせず、驚かせないよう静かに見守ってください」と。当日パンフにも記してあるが、この言葉が肝。そう言えば、舞台転換時に幕の奥から騒めきが聞こえたが、【観客編】とあるから観客がいると思わせるためかと思っていたが、幕が開いてアッと驚いた。そういう理由(ワケ)だったのか。

    一貫して唯一無二、存在するか否かといった舞台(虚構)の世界…同じものはない「たったひとつの かけがえのない世界が 劇の数だけあるのが 劇場なんです」…来た時とは反対側の客席通路を通って帰る女性、見事な劇中劇だ!
    次回公演も楽しみにしております。
    最後にご招待ありがとうございました。

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    2023/06/03 16:15

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