満足度★★★★
大胆な解釈・構成・メッセージ性
2歳のとき、初めて映画館で観た映画が東映時代劇、昭和30年代の東映時代劇映画は、大人に混じってリアルタイムでほとんど全作品を観てきた私は、筋金入りの時代劇ファンだが、いや、だからこそ、最近のTV時代劇はあまり観たいと思わないし、たまに観ても満足できない。小劇場の時代劇もおもはゆくてむしろ苦手なジャンルだ。「殺陣がスゴイ」「役者がステキ」と聞いても、まず食指が動かない。
その私が唯一楽しめるのが「バッコスの祭」なのだ。小難しい時代考証なんかすっ飛ばして、大胆な解釈・構成で突っ走る爽快さがたまらない。
やたら時代考証にうるさい自分が、「いいぞ、うんと壊せ!もっとやれやれ!」と心の中ではしゃいでいる(笑)。
しかし、森山智仁という人は、史実の肝はきちんと押さえ、明確なメッセージを伝えてくるのが流石だ。
私はいまから何十年も前に日本史が好きという単純な理由で史学科に進んだ、いまどきの「歴女」の草分けで、高校生のときは毎日「新撰組」のことばかり考えていて親に怒られたクチ。当然、本作には興味津々だったが、前回の「忠臣蔵」に続いて、また泣いてしまった。私は芝居を観てもまず泣かない、というより映画と違い、芝居では泣けない人間なのだが。
中盤で、涙がポロッとこぼれ落ちて焦った。「芝居はまだこれからだぞ、いまから泣いてどうする!」自らを叱咤し、舞台に目を凝らした。そしてラストシーン。うーーん・・・・巧い!脱帽である。
時代劇や日本史に興味ない人にもおススメです。
2010/05/17 18:13
2010/05/17 17:43
2010/05/17 15:24
2010/05/17 15:16
>バッコスの祭への、きゃるさんの思いや、舞台表現上の森山演出への評価と純粋な意味での思い入れ、そして、作品の素晴らしさに対する自然体としてのきゃるさんの印象など、その総和によって、一人の人間として、感動の涙を流されたということでしょうか。
あ、まさにそうです。恐れ入ります(笑)。
>逆に言えば、映画やTVドラマと違って、真の等身大を観ることができる、ということですね。でも、こういう魅力がたまらないんで、私も演劇が好きなんです、きっと。
ああ、きっと、そうなんでしょうねぇ。良い芝居は確かに不思議な感情が働きますねぇ。私の場合、舞台だと、あまり物語に入りこめなくて「この俳優はどう動くかな」なんて引いて観ちゃうので、映画だと物語の虚構が気にならずに泣けるけど、舞台だとめったに泣けないんですよね。
わたしは、宝塚なんかでも、好きな演出家作品だと泣いてしまう傾向があります(そういう作・演出家は高齢で引退、もしくは逝去されて、いまはいません)。
「生の魅力」といえば、大昔、小学生のときに林与一の芝居を観に行ったら、あまりにステキで毎日プログラム開くくらい夢中になったんだけど、大人になって仕事場で会ったら、カリスマ性が消えて、やたらファンに愛想のよい普通のおじさんになってて、ガッカリした。「え?この人があの・・・」みたいな(笑)。その後、彼主演のアチャラカ時代劇に知人が出演してたので観に行って、ますます失望。で、昭和40年代の旧作映画会観に行ったら、来てた人たちが「このころの与一はもの凄く良かったのにねぇ」と言っていて、「ああ、やっぱり」と納得。俳優には旬というものがあり、歳月は残酷です(笑)。