北と東の狭間 公演情報 JACROW「北と東の狭間」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    細やかな実存感が牙をむく
    舞台から醸し出される、
    色とりどりの細やかな実存感が
    終盤しっかりと武器になって
    観る側を凌駕していく・・・。

    終ってみればこの作品、がっつりと見応えがありました。

    ネタバレBOX

    描かれる人物たちの解像度の高さがそのまま舞台の力になっていていました。

    中国人女性たちには
    ぞくっと目を見張るほどのリアリティと存在感があって。
    かたことの日本語や響きをしっかりと持った中国語に留まらず、
    小さな仕草から表情のうごき、
    さらには言動までしっかり作り上げられていて。

    やくざのどこか枠をはずれたような存在感、
    偽装結婚相手の男たちから滲み出してくる喪失感、
    店の女性に取り込まれていく男や
    やくざのしかけた蟻地獄にはまっていくバーテンが醸し出す
    はまり込み感。

    それぞれが役者達の演技に支えられ
    しなやかで細密なテンションを舞台に作り上げる。
    それも、混ざり合って舞台をひと色に塗りこめるような感じではなく、
    登場人物それぞれの色がそのまま重なる感じで
    観る側を巻き込んでいくのです。

    その重なりに物語から発せられた光が当たり
    キャラクターたちがが抱くロジックというか
    もくろみや価値観のシルエットが浮かび上がります。
    中国人の女性たち、日本人の社長、
    偽装結婚の相手、やくざ、刑事、その店にかかわる男たちと
    さらにその周りまで・・。
    したたかな手法でシルエットの形状がくっきりと描きこまれた上で、
    それらが次第に積み重なり、かかわりあい、
    崩れていく姿が舞台上に築き上げられていきます。

    中国語や演出的な作りこみで、
    観る側へ届く言葉と隠される言葉が組み合わされ、
    物語に切れと深さが醸成される。
    したたかなつながりや示唆、
    見せて伝えるものと見せずに伝わるもののモザイクから、
    物語の広がりや奥行き、
    さらにはためらいを失ったようなスピード感がうまれて。

    様々なもくろみや想い達がメルトダウンしていくような終盤が圧巻。
    追い詰められていくバーテンや
    婚約者を奪われた女性、
    さらには店に火をかける男の狂気に違和感がないことに息を呑む。

    その中で、
    もくろみで餃子を作った女となにも疑わずに美味しいといった男。
    バブル崩壊の吹き溜まったような、荒みざらついた空気が満ちるなか、
    掛け違ったまま近づくふたりの想いの細やかな実存感が、
    そのまま武器となって観る側に襲いかかってきます。
    もくろみの箍がはずれ、
    座標を失った男女からあふれる不器用で生々しい愛憎のゆらぎに
    ひたすら圧倒される。

    閉塞し、荒んで、汚れきった物語の
    終わりからからやってくる、
    濃密で息が詰まるほどに純粋な愛情の瑞々しさに驚嘆し、
    その質感に一気に浸潤されました。

    この作品、かなり凄いです。
    また、しっかりと余韻が残る作品でもありました。

    ★★☆☆

    2

    2010/05/12 15:11

    0

    0

  • 本編に加えて外伝も拝見させていただき、
    物語の裾野がさらに広がりました。

    一人ずつの役者さんが背負うキャラクターに
    本編とはちがう角度での表情の表情が感じられて、
    それが本編の印象をさらに強くする。
    単純にキャラクターを羅列するだけではなく、
    キャラクター間の重なりから、物語のさらなる一面が編みこんでいくようなつくりに
    瞠目しました。

    ほんと、よいものを見せていただき、ありがとうございました。

    2010/05/14 18:29

    ありがとうございます。
    実存感、解像度、積み重ね・・・
    書いていただいた言葉ひとつひとつが、
    そうだ、それを私たちは作ろうとしていたんだという言葉で、
    本当に嬉しく思います。
    ご来場ありがとうございました!!

    2010/05/13 02:05

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