満足度★★★★
大輪の花のような
深紅の薔薇か、花粉まみれの百合か、とにかく大輪の花の匂いに噎せかえるような、濃密な時間だった。台詞の点が、集まって線となり、密度を増して、織り上がった面が迫ってくるような、勢いのある演出。
上演すると、なんだかうごめく生きものみたいになるよね。三島由紀夫って。ライフワークのように三島作品を演じる"役者"さんは幾人かいらっしゃるけれど、作品全体を正しい充実感で満たせる"演出家"さんというのは、極めて少ないのではないだろうか。
役者さんの中では特に久世星佳さんが、それこそ宝塚音楽学校のころから今に至るまで、ストイックに声と身体とドラマティックでゆたかな語彙を鍛えてこられたことが伺いしれる、すばらしい演技でした。