日本語を読む その3~ドラマ・リーディング形式による上演~『老花夜想』  公演情報 世田谷パブリックシアター「日本語を読む その3~ドラマ・リーディング形式による上演~『老花夜想』 」の観てきた!クチコミとコメント

  • 演出という仕事
    若手演出家によるドラマ・リーディングの3本目は中屋敷法仁の演出で、太田省吾の作品を。上演時間は約90分。
    今回は登場人物が多いこともあり、ほかの2本ではあまり感じられなかった演出の仕事ぶりがちゃんとわかった。一つは戯曲の登場人物12名に対して、役者を8名にしたこと。アフタートークによると、これは戯曲で指定されたものではなく、演出家の判断でそう決めたものだという。登場人物が多いと混乱を招きやすい。観客の理解を助けるという配慮から出演者を8名にするのがベストだと判断したそうだ。
    もう一つ、ト書きの扱いについてもほかの2作と違いがあった。役者それぞれが、自分の役について書かれたト書きを基本的には自分でしゃべっていたというのが特徴的。また複数の役に向けてのト書きでは、その複数を演じる役者がユニゾンでト書きを読んでいた。たとえば「AとB、退場」というト書きがあったとすれば、そのト書きをAとBが声をそろえて読むわけだ。いっぽうまた、役者個別のト書きではなく、全体的な状況説明のような場合は、出番が後半にしかない役者が主にそのト書きの読み手を担った。そんな具合で、ト書きの読みにも独特の割り振りがあり、そこにも演出家の創意工夫が感じられた。

    アフタートークによると、中屋敷はこの日の午後にトルコからもどったばかりとのこと。イスタンブールで例の蛇使いを上演してきたわけで、考えてみればずいぶん無茶なスケジュールだが、トークによるとリーディングは基本的に稽古を2~3回やっただけで本番に臨むそうなので、だからこういう綱渡り的なことも可能だったのだろう。

    太田省吾の作品はこれまでまともに見たことがない。劇団地点がやったのは全テクストからの抜粋だし、晩年の作である「ヤジルシ」は途中で興味をなくして席を立ったのだった。
    「老花夜想(ノクターン)」という作品は太田が沈黙劇を始める以前に書いたもの。月食の夜に老いた娼婦の思い出が幻想的に花開く。月が人間に特別な影響を与えるファンタジーといえば「月の輝く夜に」という映画を思い出すが、この作品もそういう系列の物語のようだ。この戯曲は面白かった。

    役者では老いた娼婦を演じる内田淳子の演技が飛びぬけてすばらしい。ほかの出演者だって全然悪くないのだが、彼女の演技力はなんだかものすごく特別なものに思える。

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    2010/05/08 12:40

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