『ハチクロニクル』 (公演終了) 公演情報 劇団鋼鉄村松「『ハチクロニクル』 (公演終了)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    凄いよ、これ!
    と、大声ではまだ言えないけど。

    冒頭では笑うつもりで観客として待機していたのに、笑うというより驚いた。
    ただ、驚いた。笑いはそれほどではなかったけど。
    見終わってからちょっと興奮した。

    初めて観る劇団だけど、こんな内容だとは思ってもみなかった。
    ひょっとしたら凄い金脈に当たったのかもとか思ったりして。

    だけど、観客をもっと楽しませてくれよ、とも思ったのだ。

    ネタバレBOX

    数学者ダン池田は、自分の分身でもある犬と猫と対話をしながら暮らしていた。ある日、彼は1年ぶりに窓の外を見ると観覧車が回っていたことに気づく。そしてノスタルジー。
    観覧車から「ハチクロ」(マンガ「ハチミツとクローバー)に想いが巡る。

    ダン池田は犬との対話から、ハチクロが紀元前から存在していたという仮説を立てる。観覧車を発明したダビンチもハチクロを読んでいたなどという仮説が積み重なる中で、世界史の教諭である友人の吉村が現れる。
    池田も吉村もハチクロに対する想いはとても強い。

    ダン池田は、すでに自身で発見した具体的な事象に関する数式から、ハチクロを表せる数式を考えることになっていく。

    そこにいろいろな分野の学者たちや11浪中のバグちゃんが絡んでくる、というストーリー。

    かつて少女漫画にあこがれていた少女たちのように、池田と吉村は、ハチクロに理想を見ている。それは、「片思い」という体の良いカタチをした彼らの逃げ道でもあったのだ。

    自分たちでさえ解けない自分たちの状態をハチクロの本質を数式で求めることで、なんとかつかもうとしているのだろう。

    それは、現代というのは、ニュートンが万有引力を発見したように、つまり、1つの事象をシンプルに1つの理論で論じたような世界は、すでにない時代であり、それは、例えば、現代の科学がいにしえの基本理論がたどる道筋の中の「闇」の部分をクローズアップしていくようにしか、とらえることができないということに近しい時代ということなのだ。

    ハチクロに「解答」があると思っている池田たちは、つまり、そうした「闇」に何かを見いだそうとしているのだ。というより、見いだすことしかできないでいる。

    それは、11浪中のバグちゃんも同じだ。彼女は「解答が多すぎる」と嘆いている。

    数学と恋愛と物事の真理のようなことを、オフビートなドタバタでつないでいく。

    なんというか、その中を理系の台詞が詩のように流れていく。
    細かい部分でかなり気が利いているし、言葉の中の仕掛けも、そこここにある。ブービートラップのようにある。
    饒舌な台詞の数々。センスがいい。
    舞台が始まってから、一言も聞き逃さないと身構えた。
    ・・・あまりにも情報量が多すぎて、入ってきてもボロボロとこぼれ落ちるばかりだったけど。

    主人公のダン池田役のムラマツベスさんが凄い。犬役の村松かずおさんの間がいい。他の出演者もなかなか。
    全編オフビートなのに疾走感すら感じてしまう。
    歌っても踊ってもオフビート。

    無意味で悪夢な展開も素晴らしい。

    特に説明らしき説明もないまま、ダン池田の部屋だかどこかだかで繰り広げられ、入り乱れる人々。
    相当集中して観ていた。1時間50分ぐらいの上映時間は気にならなかった。
    ・・・が、やっぱり長い。情報量が多すぎだから疲れる。けど、いい。

    ただ、演じることで一杯一杯なのか、あるいは内容が盛りだくさんすぎるのか、観客に対するサービス的なものが今一歩足りないような気がした。
    つまり、「もっと観客を楽しませてくれよ」ということだ。
    ここが面白いというところをうまくクローズアップしてほしかった。
    それは山場ともいうし、盛り上がりともいう。
    意外と平板に進行しているような気もしたから。

    劇団内で閉じられてしまっている感覚。
    それは、今回の舞台の内容とリンクしていると言えば、そうとも言えるのだが、それを意図しているとは思えないからだ。

    たぶん、ハチクロを読んだことのある人は、その閉じた空間を突破するためのカギを手に入れていたのだと思うが、そうでない観客にもそのカギのありかぐらいは示してほしいと思うのだ。

    今回の舞台は、この劇団の本来の姿なのだろうか。どうもフライヤーのイメージとちょっと異なっている。前回のフライヤーも見たが、そちらはヒーローものなのかと思ったりしたり、今回は、ファンタジー的なものかと思ったりした。なんか、そこに鋼鉄のような質感がありーの、で。

    21世紀型の不条理劇?
    洗濯機と天動説のあたりや過去への邂逅などのスムーズな展開に、演劇的なセンスを感じた。
    ラモーンズのように、メンバーが村松(ムラマツ)を名乗っているのも好ましい。

    なんていうか、スコップで掘っていたら、金脈にぶつかった感触がしたというか、そんな感じ。ただし、感触がしただけで、金脈自体はまだこの目で確認したわけではない状態なので、実は、大声で「これ凄い」とは言えないのだ。

    だから、次回も都合さえ合えば見に行きたいと思った。演劇的な金脈が発見できるかもしれないから。


    でも、ハチクロ読んでないんだけどね。

    2

    2010/04/18 07:41

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  • KAEさん

    コメントありがとうございます。

    私は、今回の内容も気に入りました。ハチクロを知っているとか、いないとかというレベルの問題ではなく、その方法論というか方向性に何か面白さが潜んでいるように感じたのです。
    もう一皮むけるというか、何かがちょっとだけ変わるともっと面白くなるような気がするのです(正確には私好みになるような気がするのです)。それは何なのかわかりませんが、気になる存在です。

    作がもうひとかたいるのというのは、面白いですね。
    これから注意していきたいと思います。
    情報ありがとうございます。

    2010/04/20 06:14

    アキラさん、ご覧になっていたのですね?
    私も、今日観てまいりました。
    前回、私のごひいきの吉岡さん(8割世界の会場案内で、アキラさんが目を留めて下さったスーツ姿の男性です)が、戦隊員役で客演したので、観に行って、とても面白くて、気に入った劇団だったのですが、今回は、私にはあまり面白くありませんでした。
    どうやら、前回公演と作者が違ったようでした。
    配布チラシに入っていた、次回公演の予告によれば、次回の作者は、戦隊ものを書かれたバブル村松さんのようなので、私も、次回公演は楽しみにしたいと思いました。題名も気に入りましたし…。
    今回とは違ったテイストではと思いますので、アキラさんも、良かったら是非いらしてみて下さい。

    2010/04/18 20:38

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