紙風船、芋虫、かみふうせん❤ 公演情報 オクムラ宅「紙風船、芋虫、かみふうせん❤」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    とても良くできた愛すべき小品たち
    ちょっと大げさに言えば、演出の奥村さんが持つ世界観や生き方のようなものが、ギュッと込められていたようで、そこに好感が持てた。

    そして、今回の会場のサイズが、いい効果を生んでいた。

    ただ、それぞれの作品については、気になるところがあり、それがひっかかってしまった。

    ネタバレBOX

    「紙風船」
    夫婦の日常の会話から、夫婦の姿が浮かび、それが「紙風船」へと収斂されていく物語はあまりにも美しいと感じた。さすが岸田國士! と思わずにはいられなかった。
    演ずる2人の俳優も、それぞれの内面にある気持ちを覆い隠しながら、制御された演技はなかなかだと思ったが、新婚1年目、日曜の午後の空気感までは漂わせるところまではいかなかったと感じた。
    それがあれば、完璧だったと思う。
    それがうまく表せなかったのはなぜだろうと思ったら、ラストの1本「かみふうせん」を観て、「あ、これか」と思い当たった。
    このラストに控えている1本のテンションが、俳優の中に待機していたのではなかったのだろうか。深読みすぎかもしれないが。

    「芋虫」
    江戸川乱歩の「芋虫」は、とても辛い作品だ。それにインスパイアされたこの奥村さんの「芋虫」は、戦争によって変わり果ててしまった夫とその妻という関係性と、妻の心の闇という要素を踏襲して作り上げられていた。
    この作品では、戦場で手足を失い「芋虫」のようになった乱歩の作品とは異なり、「着ぐるみの熊」という姿になってしまった夫が戦場から戻ってくる。
    「芋虫」と表現される姿に比べて「着ぐるみの熊」は、一見楽しげだが、実は辛い。
    くりくり目玉とほほえんでい熊の顔を見ていると最初は、笑みがこぼれるのだが、段々笑えなくなってくる。
    ちょっと大げさな着ぐるみの動き見せれば見せるだけ哀しいのだ。
    この設定のうまさにき舌を巻いた。
    乱歩は、妻の闇を夫への虐待で描いたが、奥村さんは、妻が自らの心の中に閉じ込めていったようだ。
    夫も自らに閉じていく。
    ただ、この作品の中に、あえて放り込んだコメディ的な要素が気になってしまった。それは、酒屋のサブと下着のくだり、それに食事のときの醤油だ。ちょっとした笑いが起きるのだが、これは不要だったのではないだろうか。
    淡々とする世界に、着ぐるみの違和感だけで成立したと思うので、この箇所が喉に刺さった小骨のように気になってしまった。

    ・・・観客にツボにはまったのか笑いが止まらない人がいた。人それぞれだが、そこまで笑うか? と思ってしまった。小さい会場だったのでいやでも見えてしまうのだ。

    「かみふうせん」
    驚いた。最初の1本とまったく台詞は変えず、現代の若夫婦の会話として演出されていた。
    見事だ。
    演じる2人も活き活きしていた。
    「紙風船」の妻の気持ちを、ストレートに表現していたように感じたし、夫婦の本来の関係も露わになったように思えた。
    途中の段ボールを使った演出も見事で、この緩急が素晴らしいと思った。
    が、ラストがいただけない。

    なぜこんな幕切れにしたのだろうか。
    この作品のテンション的な納め方の方法として、あるいは、ちよっと衝撃のあるオチにしたかったのだろうか。どうもこの展開だけは信じられない。残念な気持ちで一杯になった。
    そこまでの空気でこうなるのか? と思わざるを得ないのだ。
    この夫婦の関係は、会話から観ても結婚前からこうであっただろうに。
    これさえなければ、何も言うことはなかったのだが。

    3つの作品を通して語られるのは、夫婦の関係だ。阿吽の呼吸を大切にしたいという様は、実に日本人的とも言えるし、結局のところ、昔も今も夫婦は他人であって、結婚したときから家族になることで、言葉にしなくても通じ合えるという幻想を抱いていることが根底にある。

    3本ともに「きちんとした会話」(コミュニケーション)が、そこにあったのならば、何事も起こらない話だったと思う。

    そして、言葉のやりとりがあり、一見通じ合っているように見える「ディス・コミュケーション」の姿が奥村さんの考える夫婦の姿なのだろう。自らの心の中を広げて見せたような感じさえある。

    実際は言葉による対話もほとんどないのが、新婚とは呼べなくなった「できあがった夫婦」(笑)の姿なのだか(それも幻想かもしれないが)。

    細かいことだが、作品の根幹をなすものだと思ったので、評価は厳しいものになったと思う。
    ただし、奥村さんの作り上げる世界には共感が持てたので、今後どのような世界を見せてもらえるのかは興味がわいた。
    今後も注目したいと思うのだ。

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    2010/04/17 09:11

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  • KAEさん

    コメントありがとうございます。

    とってもいい雰囲気でしたよ。

    2010/04/18 08:28

    アキラさん、こんにちは。
    この公演、とても気になっていました。
    戯曲では読んでいるので、一体どんな風になるんだろうと、観に行く予定はないのに、心にずっと引っかかっていたのです。
    詳細なアキラさんのご感想を拝読し、何となく、雰囲気を想像することができました。
    ありがとうございました。

    2010/04/17 21:45

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