復讐回帰 公演情報 劇団銀石「復讐回帰 」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    言葉との格闘技
    「太陽系誕生譚」に「魔笛」や「忠臣蔵」「東海道四谷怪談」や「アンネの日記」やらが複雑に絡み合い、観客の頭も混乱しそうだが面白かった。万人にウケル芝居ではないと思うが、この劇団には強烈な個性がある。
    佐野木さんは「夢の遊眠社」で野田秀樹が頭角を現してきたときに感じたものを思い起こさせる。私、個人的には、あの当時、野田さんのブッ飛び感には付いていけなかったけど、佐野木さんにはそのような隔絶感はなく、じゅうぶん楽しめてます。ことば遊びが、どこかシェイクスピア風で、理屈抜きに面白い。
    佐野木さんは才能のある人だと思うし、プロデューサーが違う視点でサポートしているのも評価できる。
    舞台装置や照明、音響、劇団の名物ともいえる浅利ねこの衣裳なども戯曲をよく助けていた。でも、苦言がひとつあるのでネタばれで。

    ネタバレBOX

    ストーリーを説明すると長くなるし、今回の場合は、とにかく実際に観に行って確かめるべし、という芝居ですね。
    登場人物が多く、全編、言葉との格闘。役者の滑舌が台詞についていけない箇所も多々みられたが、それはしかたないかと目をつぶります。
    主役のパミーナの浅利ねことタミーノの加藤諒はこの世界でよく生き、奮闘している。
    紅や白粉を流して意思表示するという場面は、元は中国の故事から来てると思うが、文楽や歌舞伎の「国戦爺合戦」の錦祥女の「紅流し」のくだりを思わせてハッとしたし、最後の戸板の裏表に男女が張り付く場面は「東海道四谷怪談」の趣向を面白く生かしていると感心しました。

    最後にどうしても気になったことを書きます。劇中「ぐんくつ」という台詞がでてきたので、「軍靴=ぐんか」のことかと思い、PPTで作者に質問したら「軍靴をぐんかと読むとは知らなかったが、自分はリズムや言葉の響きを大切にして書いているので今後も変えるつもりはありません。ぐんくつで行きます」との答えが返ってきた。PPTでは時間がなかったので、あえて反論しませんでしたが、「ぐんくつ」というのは明らかに誤読なのですよ。製靴業は「せいかぎょう」と読むが、「せいくつぎょう」とは読まない。「靴」は重箱読みはしないのです。「革靴」は「かわぐつ」と読むが、どちらも訓読みです。ショートブーツのような靴を「短靴」と言い、こちらは「たんぐつ」と読みますけどね。
    「音の響きがいいから変えない」というのは「屁理屈」というもので、これは、個人の好き嫌いの問題ではなく、「ぐんか」というひとつの名詞なんです。軍人の履く編み上げ靴を指す名詞なのです。
    現に「ぐんくつ」って本来はない言葉だからこそ奇妙な響きで、私など耳に心地よいどころか、かえって耳障りだから気づいたのです。「軍旗」は「軍規」と音が同じ「ぐんき」ですが、あえて「ぐんき」で「ぐんはた」とは読みません。たとえば、「滑舌=かつぜつ」を「かつした」と読んだり、「田園」を「でんえん」でなく「でんその」と読んだら、変でしょう?「ぐんくつ」はそれと同じことです。
    確かに「ぐんか」と言うと「軍歌」とまちがえそうなので、どうしても「くつ」と読ませたいなら「軍人の靴」と言い換えるべきです。演劇という言葉を扱う仕事をしている人なら、胸を張って誤読を通すなんて恥ずかしいことですよ。麻生太郎ではないのだから。試しに調べてみると、最近の国語辞典には「軍靴」ということばは載っていないんですね。戦後のなせるわざなのか、まあ、こんな言葉は平和のためには使われないほうがよいのですが。漢和辞典にはちゃんと載っています(「軍靴」の「靴」は「化」にヒゲのつく旧字を使うのですが)。
    佐野木さんも何かの本で「軍靴」という字をみつけて使ったのでしょうが、誤読はあくまで誤読なので、私のようにそれを知っている者が聞けば、「役者が台本の字を読み違えている」と誤解するか、「作者が誤読したまま上演している」と解釈します。そんなところで表現者の意地を通してもプラスにはならないのではないでしょうか。小劇場のような狭い世界だから許されるが、中央劇界でそんなことを主張したら、識者に笑われますよ。才気のある劇作家だけに残念に思います。

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    2010/04/02 12:26

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  • 清水様

    ここ2日くらい、PCを使えず、お返事遅くなり、失礼いたしました。
    アフタートークの節は失礼申し上げました。

    佐野木さんの脚本および劇団全体としての芝居作りには大変興味を持っており、いつも題材選びが斬新で構成が凝っていて感心させられます。
    「最高傑作」や今回の作品に歌舞伎味を感じるので、いつかぜひ近松門左衛門の世界と現代劇をミックスさせた作品を作っていただきたいと思います。

    2010/04/13 13:26

    きゃる 様


    ご来場いただきまして、誠にありがとうございます。
    劇団銀石・制作の清水です。

    アフタートークでの一件、大変失礼いたしました。
    きゃる様のようにしっかりと言葉にして伝えてくださる方がいらっしゃって感謝しております。

    また、作品に対して好感を持っていただけていること、本当に嬉しく思います。
    まだまだ、これからが成長期と言える劇団銀石です。
    きゃる様をはじめ、たくさんの方から、こうやってご意見やご感想をいただき、それを受け止めながら、反映しながら、佐野木自身の世界観を膨らませ、スタッフたちでそれを支え、作品を作ってまいります。
    次回公演は9月末~10月頭。
    こちらにも足を運んでいただき、劇団銀石の成長ぶりを見続けて(観続けて)いただけたら幸いです。

    今後も、劇団銀石をどうぞよろしくお願いいたします。

    2010/04/12 16:12

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