7ストーリーズ 公演情報 劇団青年座「7ストーリーズ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    5ストーリーズぐらいが良かったかも
    モーリス・パニッチは、俳優座で上演した「金魚鉢の中の少女」がとても面白かったし、小林七緒さんは、「標的家族!」の演出が面白かったので、大変楽しみな舞台でした。
    まず、劇場に入った途端、洒落たセットに目を奪われ、始まってしばらくは、期待通りに面白く拝見したのですが、6っつ目の窓の中の住人の話しになったあたりから、だんだん眠気が襲って来て、ちょっとウトウトしてしまう箇所が出始めました。私だけでなく、その頃から、客席にワサワサとした空気が充満し始めて、何となく皆の集中力が途切れた空気が伝播するのを感じました。
    人生哲学テイストのブラックコメディ風で、7つの部屋の住人達のキャラクターも、デフォルメされているとは言え、なかなかいそうな人物ばかりで、大変ストーリー展開も気が効いて面白かったのですが、7つの住人のエピソードはやや長く感じました。
    5つのストーリーぐらいにして、1時間半に収めた方が、もっと厭きずに観られたし、中身も濃くなった気がします。
    一人だけ、一役を通した、男役の小森創介さんが、自然体の演技で、終始舞台を引っ張って、素敵な舞台表現で、魅せて下さった反面、石橋さんの如何にも演じています感漂う演技と波長が合わず、そのことが、舞台全体のクオリテイを下げてしまう原因になり、残念でした。
    青年座の大家さんは、八面六臂の活躍で、特に、最初の元俳優の役は、コメディセンスが素晴らしく、大家さんて、こんなに喜劇向きな方だったかと、認識を新たにしました。
    三鴨さんはいつ何を観ても三鴨さん風ですが、でも彼女の独特な声や演技は、いつでも、舞台を明るくする効果があり、決して苦手な女優さんではないのですが、今回の舞台では、もう少しトーンを落とした喋り方の方がベターな気がしました。
    「オールナイトフジ」にご出演の頃は、どちらかと言えば、好きになれないタレントさんだった、山崎さんは、その後、文学座で、験算を積まれて、大変味わいのある女優さんになられたなあと、感じ入りました。
    変な心理学者と、100歳のお婆さん役を演じられた、柴田さんが、この作品の核になる役を好演され、舞台を引き締めていました。

    終わった途端、後ろの席の熟年女性客が、口々に「あー、疲れた!絶対、こんな芝居、こんな劇場、もう二度と来ない!」とえらくご立腹の様子でしたが、これもきっと、もう少し、ストーリーが手際よくまとまっていたら、そこまでの思いは生まれなかったのではと思います。
    序盤が大変興味深く楽しめただけに、終盤が、やや冗長に感じられたことが、もったいない気がしてしまいました。

    ネタバレBOX

    七つの窓が、舞台平面にしつらえてあり、何となく、日光江戸村のからくり忍者屋敷風な、視覚的錯覚を生み出し、大変ユニークなセットでした。
    一番素敵だったのは、自殺しようとしていた男と、元俳優の結婚詐欺師まがいの男が、並んで、窓枠に腰掛けて話すシーン。つまり、それは二人が実際には、舞台に寝て話すわけですが、どう観ても、窓に座っているようにしか見えず、洒落た演出だなと感激しました。
    男役の小森さん以外は、全員、各部屋の住人や来客役を、早替えで、何役も演じますが、大家さんと柴田さん、山崎さんの演じ分けが見事な反面、同じ人物が違う窓から登場したのかと勘違いしてしまう、役者さんもいて、キャストの演技レベルに差があったのが、残念でした。好演の大家さんでさえ、何度か台詞を噛んでいたし…。
    最後の窓の住人の100歳のお婆さんは、何となく、オスカー・ワイルドの「幸福の王子」を想起させました。
    モーリス・パニッチのオリジナル舞台を知らないので、何とも言えませんが、このセットや、演出が、もし小林七緒さんの工夫だとしたら、小林さんは、演出家として非凡な才能をお持ちだとお見受けします。
    モーリス・パニッチと小林さんは、私にとって、共にこれからも注目したい舞台人となりました。

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    2010/03/31 23:47

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