血の婚礼 公演情報 劇団東京座「血の婚礼」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    未見の作品だが、戯曲の力…その物語性としての魅力 面白さは伝わってくる。しかし、それを十分に表現できていないところが勿体ない。話の展開は、構成(場面転換)の上手さも手伝って理解出来るが、その場面で描くべき内容の印象が弱く、物語の奥にある人の情念のようなものが感じられない。

    舞台美術は手作り感あるもので、過去公演と同様に工夫を凝らす。特に今回は暗幕と白シーツを巧みに使い、妖しげな雰囲気を漂わしつつ、現実の生活(食事など)を表す。普通の人間が或る出来事(事情)によって、いとも簡単に起こした悲劇。それゆえ、台詞を含め 生身の人間むき出しの感情表現が求められる。台詞は時に詩の朗読のようであり抒情的に演じていたのかも知れないが、棒読みに聞こえた個所があり残念だ。
    (上演時間1時間35分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は暗幕で囲い、上手 下手にオフホワイトの衝立、そこに食器の絵柄塗。冒頭は中央にテーブルと椅子が置かれている。場転換毎にテーブルや椅子を動かし場景を変化させる。薄暗がりの中での場転換<移動>、その際 聞こえる小声の指示は花婿の母らしく、物語〈時間〉の流れを途切らせない。
    なお、客席は下手側のみに 間隔を空けて設えてある。

    舞台はスペインのアンダルシア地方。婚約した男女が互いの家族の期待を背負い結婚式を迎えようとするが、そこに花嫁の昔の恋人・レオナルドが現れ花嫁を連れ去ってしまう。が、まだ花嫁にも抑えきれない情愛があったのだろうか、抗うことなく付いて行ってしまう。花婿は2人を追いかけ森の中へ…そして悲劇の結末 というもの。レオナルドには妻と生まれたばかりの子がいる。なにより花嫁とは従兄妹同士である。血の宿命、燻り続けた果ての激情愛、地の因習<赤い糸 毛玉で表現>などが絡み合い重厚なドラマ。今の時代に圧倒的に足りない、生身の人間のむき出しの熱情を舞台上から浴びる、そんな情熱的な作品を期待したが…。

    結婚式、中央上部に花飾りされた十字架、しかし周りは暗幕、白いシーツを交差させると何となく鯨幕のようで不吉。祝福と弔意が入り混じった情景こそが、これからの悲劇を暗示している。集まった人々は酒宴に浮かれ、レオナルドと花嫁は行方を晦ます、こちらも楽と苦という相反する光景を描くことで 今後の展開に関心を持たせる。

    演技は、坊主頭に痩せこけた身体 近所の住人役・穴山ジョウジ氏が印象的である。如何にも怪しげで陰湿な感じ、よろよろと浮遊したような足取りはこの世の者とは思えない。物語には死神が登場するらしいが、まさに そんな感じである。

    ラスト、女優3人が抒情豊かに謳い上げる台詞、それが ただ読んでいるだけで情感が伴っていないよう。そこは夫々<花婿の母、花嫁、レオナルドの妻>の立場で嘆き悲しむ、もっと言えば怨嗟があってもよいのではないか。けっして綺麗ごとではない人の情念を感じさせてほしかった。
    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2023/01/22 00:15

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大