満足度★★★★
解体され新しく語られる童話の塊
<<感想>>
ラストは、素直でなんてことはないシーン、なのに純粋に超感動。そして大満足!
ライモンドの演技はちょっとクサいくらい、それでも感動できるのは何故? これには言葉が見つからなくて、つまり「ナマ」のなせる技だろう。月並みだが、やぁ演劇ってやっぱりいいですよね、としか言えない。座席が絶好のポジショニングだったってこともあるかもしれないけども。
どこにいても役者を間近で観られるステキな会場構成。
主に外周を使うアイディアは少し新鮮で、
自分(観客全員)もお腹の中に飲み込まれたもの扱いで芝居の一部になったのは楽しかった。
この公演は地下空港としては番外実験公演なのでlightな作品。いつもなら、うねってうねってぐるんぐるん回わるとこ、今回は持ってかれるようなグルーヴ感はナシ。いつもと同じとは限らない、それが実験の旨みと心得たり!
で、物語はダンテの神曲が下敷きになっているというが、神曲だと分かって面白いことはなんだろう? 不勉強にして神曲の筋を知らないのだが、古典ならではの重厚な部分は醸せていなかったのではないかと思う。地獄っぽさはない。むしろ「神曲です」と先に言うことで地獄を感じてくれということかと。
それよりも、能のエッセンスの方が効果を発揮していた気がする。どこでそれを感じたかというと、種明かし的なシーン:腹の中の案内人・トロがライモンドを喰おうとするところ。ここでは、幽玄さが出ていたように思う。トロが中央に立ってシテのように衣を被り正体を明らかにすると、遠巻きに囲う役者、ライティングで青くなった空間、驚きを誘う上手い流れがカチっとかみ合って、ファー!っと幽玄、入ったーーーーみたいな。予想出来なかった。このことはよく覚えておきたい経験となった。
あと書いておきたいのは効果音。ヒュードロドロドロとか、敢えて古典的な音に徹していてくすぐったい面白感を出していた。それを違和感なく受け入れている自分がいて、童話の教育って凄いな、と今改めて思わされた。
総じて、古典的なものをいろいろ混ぜて独特の作風が感じられた。
テーマについては何なんだかイマイチ分からなくて、キヨが語るメッセージにも唐突感があったけど、横山大地の人柄がなせる技か無限の兄性愛が伝わりまくって、これはこれでまとめちゃっていいのでは?
童話にあるウザイ道徳とは無縁に、観客がそれぞれストーリーから思い出したことを頼りに得るもの得て納得すればいいと思う。
し、か、し、敢えて発破として書かせて貰いますけれども、
幻のセールスマン以降、いのちを削るような脚本に出会えていないのはどうしたことだろう?
(注:幻のセールスマンは、演出の方が7年暖めた物語だそうで、いのちを削ってはいないけど賭けてはいた…ような特別な本、だと思われます)
次の6月の本公演に大いに期待!! 今から超楽しみ!