そして彼女はいなくなった 公演情報 劇団競泳水着「そして彼女はいなくなった」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    うまいなぁ!
    とてもよくできた脚本に、見事な演出。

    わずか100分程度の上演時間なのに、これだけの登場人物を配し、それが少しずつ結びつき、絡み合って、物語を形作っていく様は、あまりにも美しい。
    ストーリーが一本道でないところも素晴らしい。

    ネタバレBOX

    繰り返しの台詞が、徐々にその長さを増すごとに、うっすらと真相が見えてくる。
    繰り返しの台詞が見事に効いてくるのだ。
    しかも、それが緩急をうまく織り交ぜながら、いろいろな情報が交錯していく脚本と演出。
    こんなに時間と場所が絶えず動きながら描いていく手法は、演劇でしかできないだろう。

    ブログの文章の真相や、思い違いや思い過ごしにより、事件が起こり、さらに脇のエピソードを紡ぐことで、物語の登場人物たちの姿が浮かび上がるというのが素晴らしい。

    観客に対していろいろな情報を与えつつも、消えた女性を探す男や、彼女の安否を気遣う人の視線からなので、なかなかパズルの形が見えてこない。
    フリーライターがことの真相を匂わすように進めながらも、実はそうではなかったという、ストーリーの進行方法もうまい。
    また、夫婦間の問題と、夫が抱える問題をさらりと匂わすように、表面は普通に見えながらも、ほとんどの登場人物が心に問題を抱えているという設定も憎い。
    それをわずかな台詞で見せていく。

    そうして観客の頭の中に組み立てられていく真相をエンジンとして物語を進行させる方法は巧みだ。

    人の気配の置き方、特に姉の気配や台詞が気持ちに響いてくるあたりの効果の高め方は見事というしかない。

    全体に抑えたトーンで進行するというのも気が利いている。
    その中での「絶対に誰にも言わないで」という台詞があまりにも怖い。

    ラストは、血を見せなくてもよかったような気がするのだが、見せるのであれば、スパッと一瞬だけで十分だったように思えるし、事件の内容を伝えるアナウンサーの声は蛇足のような気がした。

    これはこのレベルで作られているのだから、欲を言えば、ラストは何かもう1つ欲しかったと思う。それはどんでん返しのようなものではなく、人の気持ちに寄り添うような何かがほしかった。例えば、崩壊している夫婦のこととか、仲が良かった3人のこととかなど。

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    2010/02/14 07:35

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