ヒットパレード・スペシャル 公演情報 tea for two「ヒットパレード・スペシャル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    少し愛して。長ーく愛して。
    Aプロに感動したので、急遽、予定を変更し、続けてCプロを
    観ることにした。
    作品の関係で、Aプロよりも★は少なく、4つとさせて
    いただいた。理由はネタバレでご判断いただきたい。
    ちなみにCプロのうち、「守ってあげたい」は大根健一が脚本、島本和人が演出、
    最後の「すてきなホリディ」のみ、ゲスト作家の高階經啓が脚本を担当し、
    大根健一が演出した。
    Bプロが観られなかったのが心残り。
    最近はTVドラマも映画も観客動員力が求められ、昔の邦画によくみられた
    「ちょっといい話」みたいな文芸路線の企画は通らない。
    だからこそ、私は演劇に期待している。
    演劇の世界もまた、突き抜けた新奇な作品に人気が集まる傾向だが、私が演劇に求めているものは少し違う。
    水木洋子や成瀬巳喜男が描いたような「大人の人生ドラマ」が観たい。
    大根健一は「30歳を過ぎて作った劇団なので、細く長くを目標にしてきた」と言う。そういう淡白な姿勢にも好感が持てる。
    “普通の生活の中の人間の毒”を描ける稀少な作家だと思うので「細く長く」続けていってほしい。
    「少し愛して。長ーく愛して」という劇団があってもよいではありませんか。

    ネタバレBOX

    「サムライ」はこのシリーズの記念すべき第1作だったそうだ。
    サラリーマンの小野寺(田辺日太)が朝、これから出勤するというところ。念入りに身だしなみをチェックし、いざ家を出ようとすると、「女子高生がたくさん乗ってくる」だの「オカマの上司が乗ってくる」「課長の愛人が乗ってくる」と何だかんだ理由をつけて出社を遅らせてしまう。どうやらこの男、出社拒否症にかかって長いこと休職していたらしい。課長の愛人のノダマユミが彼の鼻毛が伸びていることを指摘したことから、「ハナゲラ」と職場でからかわれたのがノイローゼの発端で、そのほかにも入社時に自慢の長髪を職場で切られたことを根に持っている。「学生時代は南こうせつ、井上陽水、吉田拓郎らを気取って長髪にしていた」と懐かしい名前が出てくるが、中高年のミュージシャンなので古すぎる感も。小野寺はだんだん錯乱し始め、「サムライ」の歌詞に出てくるジェニーという女性の名前をつけた白熊のぬいぐるみに向かって必死に苦衷を語り、もがき、号泣する。
    5本指の靴下をはいているのは、小野寺の自宅生活が長いためなのか。
    俳優の趣味ではなさそうだが確信は持てない(笑)。
    田辺は金田明夫や三宅弘城に共通する雰囲気の俳優。

    「守ってあげたい」
    売れない小説家志望の青年(小森健彰)と同棲している銀座のホステス(西尾早智子)。青年はパソコンの新型高速プリンタを買いたいが金がないと言う。以前もらった金も歩道橋を上っている途中で風に飛ばされ、失くしてしまったと。女は見え透いた男の嘘をかばうように、似たような出来事を自分も知っていると、いとこの失敗談を話し、逆に男に「作り話だろう」と矛盾点を突っ込まれる。このへんは笑いが出る。女がいやな顔もせず、1万円札を何枚か渡すたび、男は何かしら理由をつけて、馬券を買う金に当てようとする。女のヒモで競馬好きのダメ男なのだ。女は実家の父親の糖尿病が悪化し、父の退職金で両親が始めた弁当屋の仕事もままならないのでホステスをやめ、雪国の郷里に帰って親の面倒を見ると言う。半年分の家賃は大家さんに預けておくから、と。男は-15℃になると行動力が鈍る」と言いつつ、「車の運転も弁当作りも俺のほうがうまいからさ。一緒に田舎に行くよ」と初めて優しさを見せるところで終わる。西尾のこういう役は若い女優では味が出せない。だが、この男、大丈夫か?優しさと言うより、生活力がないので置いてけぼりになるのが嫌なだけでは?「-15℃」を理由に働かないのでは、と不安になった(笑)。
    お金に苦労する女と、女にたかる男を描く作品が多かった成瀬巳喜男の映画を思わせる作品だ。このへんの機微を描くには人生経験がものを言うが、大根はさすがだと思う。

    「横恋慕」
    漫才で長年コンビを組み、どんどん後輩に追い抜かれて売れないままの2人(島本和人、湯澤千佳)。女は35歳になったのを潮時に芸人をやめ、就職を決めたと言い、男にピン芸人になるよう勧める。女は独身で、男は既婚者。
    「女子高生のときに大学生だった男と組んでいたら売れたかもしれない」と回想する女。男は学生劇団に所属していたが、女は一度も男の自宅に遊びに来なかったという。漫才に使った思い出の張り扇。しかし、それは手先の器用な男の妻が作ったものだと別れ際に初めて女は知る。お互い、憎からず思っていたのに一線を越えなかった男女の間のほろ苦くも温かな思いを描いている。小道具で語る巧さ。
    巨漢の島本は愛嬌のある笑顔に男の色気がにじむ。この島本が「守ってあげたい」の演出を担当しているというのもこれを観て納得。

    「すてきなホリディ」
    ミニスカサンタ姿でティッシュ配りをする女(塚原美穂)が高校の演劇部の先輩(大岡伸次)とバッタリ再会。男に手伝いを頼む。男は母がイスラム教に入信したため、クリスマスの思い出がないと言う。女はコスプレ、パフォーマンスでティッシュ配りをする会社を起業したが、この不況でうまく行かず、社員にも逃げられた。男は宗教が原因で子供がいじめにあい、自殺を図ったことから妻に離婚される。互いに弱みを隠しての再会。「メリークリスマス」とは言わず、「ハッピー・ホリディ」と言う男。イスラム教という設定がいかにも突飛に思え、そのこと以外話に特徴がないので、あまり面白く感じられなかった。女がティッシュを客席に配る場面で、知っている顔の客に配ろうと探しているのか、動きが鈍ってギクシャクするのが気になった。こういう小道具は思い切って気前良く、リズミカルに配らないと楽しさが出ない。
    高階は竹内まりあのこの曲を「古き良きハリウッド・ミュージカルのよう」と評している。本作にあまりその感じが出ていないように思え、残念。

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    2009/12/29 06:40

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  • tetorapackさま

    ありがとうございます。
    本来、こういう細かいこと書くのは邪道かもしれませんが、
    観ていないプログラムを気にしているかたもいるかなと思い、
    参考になればと書きました。

    2009/12/29 22:26

    きゃるさん

    Aプロのレビューを読んで、きゃるさんのCプロのレビューも気なっていましたが、しかと熟読させて頂きました。丁寧なレビュー、助かりました。

    でも、これ書くの、時間を要したでしょ(笑)。お疲れさまでした。自分の経験からもよく分かります。でも、読ませてもらうほうは、やはり詳細なレビューは嬉しいものです。

    2009/12/29 20:47

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