ヒットパレード・スペシャル 公演情報 tea for two「ヒットパレード・スペシャル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    こんな芝居が観たかった
    旗揚げから10周年だとか。
    「tea for two」という劇団名にちなみ、大根健一はは文字通り
    「二人でお茶を」という雰囲気の芝居を書いている作家。
    だが、私がここの芝居で最初に観たのは法廷劇であった。
    馴染みがある東大の学生劇団出身らしく、知的なコメディーで
    面白かった。
    2回目に観たのがまさに「二人でお茶を」系統の芝居だったが、
    悪くはなかったものの★3つという印象の芝居で、以来ずっと観にい
    ってなかった。
    今回、日程の都合上、千秋楽のAプロしか行けなかったのだが、
    あまり良かったので、急遽、午後の予定を変更して、Cプロも観ることに
    した。
    年齢を重ねた人ほど深く楽しめる芝居だと思った。
    オーソドックスだが、ちゃんと毒のある大人のドラマが描かれている。
    こういうのは単なる想像力や技術では書けない。
    ちゃんと人情の機微についてわかっていないとね。
    その点では、往年の邦画のような味わいのある作品でした。
    まず、Aプロについての感想を書きます。
    「天体観測」のみ、ミノタケプランの石井信之の作・演出。
    「桜坂」は大根が唯一好きになれない歌だそうだが、
    好きになれない歌で、こんなすばらしいドラマが作れるなんてねぇ。
    面白い。

    ネタバレBOX

    「タッチ」
    歌詞の世界とは直接関係ないストーリー。
    満員電車で遭遇した2人の男女(大岡伸次・嵐田由宇)。
    男は痴漢とまちがえられないかとヒヤヒヤしながらも美しい女性に惹かれ、コンタクトを取りたいと言う願望が芽生える。女性は、最初は密着される不快感を覚えるが、痴漢ではないことがわかり、男が高校のとき憧れていた先輩に似ていることに気づき、知り合いになるのも悪くないなと思い始める。
    双方の妄想は次第にエスカレートしていくが、思いはすれ違ったまま、無情にも別れの時が訪れる。
    ありがちなシチュエーションだけに共感できる部分が多いのか、観客は
    トンチンカンな妄想合戦に大笑いしていた。巧い!

    「重き荷を背負いて」
    小型OA機器の営業に飛び回るキャリアウーマン(倉田知美)。
    まさに「重き荷を背負いて」だ。営業先での売り込みを描いた一人芝居だが、
    倉田は実力派女優だけにぐいぐい演技で引っ張っていく。
    このキャリアウーマン、子持ちのシングルマザーらしく、「重いのは、
    子供を抱えるので慣れてますから」と言い、一礼した直後に、リュックの中の
    機器見本がドサドサと床に落ちてしまい、何とも言えぬ哀感が漂う。
    旧型機器は製造中止でアフターサービスがきかないにもかかわらず、会社は承知で在庫品を売れと命じる。
    開発部に中途入社した長谷川という男性社員が年上の女性と
    恋仲になるが安月給のため、この商談がまとまらないと昇給できずに
    結婚できないという事情がある。最後の台詞によると、長谷川の
    相手は彼女なのか?
    「頑張れ!」と心の中でエールを送りたくなる。

    「天体観測」
    都会で一人暮らしの妹リエ(湯澤千佳)のもとに実家の農家から出稼ぎの兄
    (小森健彰)が上京して泊り込んでいる。兄は借金があるのに息子の
    クリスマスプレゼントに高価な天体望遠鏡を購入し、妹に責められる。妹は妻子ある男性と不倫しているらしい。
    兄がシャンプー、リンスの容器に区別する字を書いたため「シ、リになって
    みっともない」と妹が怒るが、逆に読めば「リ、シ」で兄の借金の「利子」
    と符合するという場面も入れてほしかった(笑)。
    互いの非を責める2人だが、認め合ってもいる。流星に「リエの幸せ!」と連呼する兄。レジ袋から妹が兄の好きなチューハイやツリーのミニチュアを取り出して1個1個テーブルに並べていくことで和解の気持ちを表す演出が心憎い。

    「桜坂」
    職場を寿退社し二児の母となった先輩ユミ(畠山明子)と同期で唯一独身OLのマキ(渡邊亜希子)が喫茶店で会っている。ユミはマキに早く幸せな結婚をしてもらいたいと言い、見合相手を何人も紹介しているが気に入らない様子。マキはユミの夫である課長と不倫していたのだ。
    誕生日の1月5日にちなみ、このテーブルも15番テーブルでユミの席に「彼」である夫がいつもすわっていたと言うことから、ユミは15の数にちなんだ覚えのない商品が家に届く嫌がらせをマキに告白する。
    マキは居直って意地悪なことを並べ立てるが、ユミはなじりもせず、じっと受け止める。
    経験から言うと、世間にはこういうけなげな妻も実際存在する。
    2人の女の間を立ち回っている男(夫)の姿が想像できる。
    畠山は演技経験が豊富なだけに、こういう受けの芝居が巧い。
    服装からしても、小綺麗なマキに対して、所帯くささがにじみ出ており、
    その姿でマキに「いまから高いお店連れて行ってよ」と毒づかれても、
    耐える表情がいい。
    しかし、大根健一はどうしてここまで女性心理に詳しいのか。
    脱帽する。

    4

    2009/12/28 17:39

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  • teorapackさま

    >そんな風に心安らかにお茶の一時を楽しめるような芝居

    ああ、そういう雰囲気のお芝居ではありますね。数年前に見たときも、デートに選んでも
    いい感じで大人っぽかった。うんと若い人はテンポがゆっくりしてるから合わないかも。

    どちらかといえば、オムニバスは私も好きじゃないです。でも、吉村公三郎とか昔の監督が
    好きな女優使って豪華なオムニバス作ってるのは良かったです。要は脚本と演出、俳優の
    技量でしょうね。この劇団は、今回みたいに連関性のないオムニバスでなく、1つにまとまってる
    のも作ってますね。客演陣も上手な人選んでるし。自分の好きな俳優を推薦したいくらいです
    (笑)。
    常日頃、tetoraさんが言われている暴力の表現の問題、ジエン社の作者本介さんがものすごく
    詳細なアンケートを公演でとってたのですよ。「何をどこまで許せるか」という質問。彼の良心を感じました。tetoraさんが共感しそうな作者ですよ。

    2009/12/29 22:43

    きゃるさん

    >今回、オムニバスですが1本立てでどんな作品かはわからないですけどね。

    そうですね。実は私、オムニバスと言うのは、どちらかと言うと、あまり好みではなくて、やはり、しっかり1本物を見る方が基本的には好きです。でも、まれに、すごくクールな短編に当たる時もありますが……。なので、1本でどうか、観てみたいですね。

    >自分は笑いやペーソスのある古風な芝居が好きなので、あれですが。
    以前の公演で、「つまらない」と酷評されてるかたもいらしたので好みが分かれるかもしれませんね。

     私も笑いやペーソスのある古風な芝居が好きです。それに加えれば、キンキンのハイテンションより自然な現在口語演劇、難解な不条理より分かりやすいベタ演劇の方が基本的には好きです。そして、台詞は、もちろん描く内容にもよりますが、これまた基本的には現代の若者言葉は苦手で、日本語が本来備えている素晴らしい表現力や語彙の妙味が伝わるような脚本が好みです。ミュージカルやレビューも好きですが、これらは歌や踊りが下手だとガッカリして落胆するタイプです。子どもや女性への虐待や暴力を、執拗に、もしくは軽々しく見せる演出も、もちろんそれをネガティブメッセージとして真摯に伝えている場合を除いて、嫌いなほうです。

     あれれ、何書いているんだろう(笑)。要は、そんな傾向で私も好みで左右されちゃう方です、っていうことです。どうでもいいか(笑)。

    >確かにひねりとかノリとか新しさはないですから「平凡」と思われるかたもいるでしょうね。

    私は「平凡」については、いたって平気な方です。

    それにしても、tea for two って名前、なんか英国のアフタヌーン・ティーみたいな印象が思い浮かんで、いいですねぁ。二人でお茶を入れるときは、スプーン3杯の茶葉を茶器に入れ、まず1杯目は「tea for cup 」と言いながら、2杯目は「tea for you」 ,そして3杯目に「tea for me」と言って。そんな風に心安らかにお茶の一時を楽しめるような芝居という意味で、 tea for two ってしたのかな?

    はい、tea for two 今後はぜひ観たいと思います。

    2009/12/29 20:38

    tetorapackさま

    コメントありがとうございます。
    以前、観た芝居では大根さんが格別女の心理の襞を描いてる
    という印象はなく、だからずっと観てなかったと思うのです(笑)。
    今回、オムニバスですが1本立てでどんな作品かはわからないですけどね。
    自分は笑いやペーソスのある古風な芝居が好きなので、あれですが。
    以前の公演で、「つまらない」と酷評されてるかたもいらしたので好みが分かれる
    かもしれませんね。
    確かにひねりとかノリとか新しさはないですから「平凡」と思われるかたもいるでしょうね。
    若い方にはあまりピンとこない芝居かもしれません。
    大根さんは私よりずっと若いので、どうしてこんなに巧く書けるのと尊敬しちゃうんですが。

    2009/12/28 20:06

    きゃるさん

    興味深く拝見させて頂きました。これ、気になっていた公演だったのですが、いかんせん、年末の仕事の追い込みと期間がダブって、今回はスケジュール調整ができませんでした。

    >年齢を重ねた人ほど深く楽しめる芝居だと思った。オーソドックスだが、ちゃんと毒のある大人のドラマが描かれている

    ネタバレ欄、「はぁー、こういう芝居だったんだ」と楽しく読ませてもらいました。やぱpり、観たかったなぁ。

    >しかし、大根健一はどうしてここまで女性心理に詳しいのか。脱帽する。

    他の方のレビューでも評判いいし、その辺のところを、次回、私めも観てきたいです(笑)。

    2009/12/28 19:36

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