モンキー・チョップ・ブルックナー!! 公演情報 アマヤドリ「モンキー・チョップ・ブルックナー!!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    私を守ってください
    男を落とす言葉として、こんな殺し文句はない。だから、男は自分が命をかけても守らなくちゃ、という気になってガゼン張り切ってしまう。と、同時にこの言葉には一種の呪文みたいな魔法が潜んでいて、じわじわ~っと女の見えない操りに動けなくなってしまう。
    舞台はひじょうに観やすく聞き易い、日常に近い世界の会話でもって、言葉遊びも絶妙だったから、すんごく楽しめた!初見の方にはただ見特典があるから、ただ見するといいよ~(^0^)

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    舞台のセットは至ってシンプル。カラーテーブル6個のみ。だけれど、このテーブルの使い方が巧みだ。

    一軒の家で小田と星野、仁村の3人がシェアして住んでいた。そこへ星野が三谷クミコを保護したといってこの家に連れてくる。話を聞くとクミコは見城という男に監禁されてたという。クミコを警察に連れて行くかどうかを話していると、クミコは警察には行きたくないと言い出す。そんなクミコの意思を尊重して、とりあえず小田の部屋において暫く様子をみようという事になったのだった。クミコは小田に「私を守ってください」とずけりと言う。この言葉をきっかけに小田のクミコへの執着が始まる。まるで呪文をかけられたハリーのようだ。

    人付き合いが下手で内向的で話ベタな小田は周りに居る友人らとも、ある一定の距離感を常に感じているタイプだった。 他人と上手く接触できない閉じた気配を身にまとっているのだ。他人の殻に触れ合わないようにして一人分の空間をうめている。そんな孤独を感じていた小田は、しかし、だからこそ、常に温もりが欲しい、という欲求は強かったのだと思う。この冷えた心を癒してくれるのは想うだけで愛しさが溢れる恋人の存在しかない、とも感じていたはずだ。そして、これまではなんとかみんなの中に紛れ込んで普通のふりをしていたいという願望にしがみついていたのだとも思う。

    そんな小田の目の前にクミコという希望が現れた。彼女は別の惑星から来た孤独な生き物に見える。自分と同じ匂いだ。小田のクミコに対する愛の行方は方向を失った船のようにゆらゆらと留まるところも解らず屈折し歪んでいく。気が付けば、クミコを監禁していた見城と同様に小田もクミコを監禁していたのだった。小田は「クミコのことを自分ほど愛してるヤツは他には居ない。自分ほど深く想ってるヤツは居ないんだ。」とでも叫びたいような、そんな心境になっていく。だから、クミコが心配で心配で仕事にも行けなくなってしまい、家から出られなくなってやがて退職してしまう。自らの監禁だ。

    この時期からシェアしている3人の関係がギクシャクしていく。クミコを好きになってしまった小田は他の二人の意見が耳に入らないのだ。仁村は「もしかしたら、クミコに小田が操られてるのではないか?」と気づくも、その言葉も小田の耳には、何の効力もなくなって自分自身の感情をも抑えられなくなってしまう。感情が理性に勝つ瞬間だ。まるで小田の正常な赤い血は、やがて青い血に変化し逆流していくかのようだ。その青い血の存在は理不尽な深い海の中に沈んでいくように急速に流れる。情熱を燃やせるものが、のめり込めるものが、クミコしかない。小田にとってそれが人を愛することであり逃れられない宿命なのかもしれない。

    やがて、クミコはそんな状況の中、ふっと居なくなってしまう。ある日突然、誰かが居なくなるということは、もはや言葉を交わすことも、あの穏やかな笑顔を見ることもなくなるということなのだ。その不思議な空白。何かを断ち切られたような淋しさ、自分の一部がもぎ取られたような暴力的な不在。残された小田はクミコの置いていった携帯電話から、クミコが持って行った小田の携帯にかけまくる。このシーンはかつての見城と同じシーンだ。ここで何故クミコは自分の携帯を置いて行ったのかが引っかかる。繋がりを残す為なのか、それとも小田を試したいのか、あるいは自分を悲劇のヒロインに仕立てたいのか・・。

    こういった演出はお見事というより、もはや完璧でゾクゾクした。それと同時にクミコはこうやって男を転々としながらさ迷い歩いてるに違いないと感じる瞬間だ。クミコを3人のキャストで演じる意味は何か?と考えたが、きっとクミコの持っている三面性を表したかったのだろう、と勝手に解釈する。しかしどのクミコも根っこは一緒だ。

    やがて、クミコを失った小田は自分の殻に閉じ篭って独自の精神世界に自らを監禁してしまう。小田の輪郭はどんどん緩んで正体のわからない重みだけが、ゆっくり増していく。なんともグロテスクなフォルムだ。

    そして、3人は別々の玄関を探して靴を履く。
    この言葉は序盤での仕掛けと伏線が繋がって、「ああ、成る程!」なんてすっきりする。コメディか?と勘違いするほど、巧みなセリフで笑わせ、時には小田の内面を透明な赤のような色彩で魅せる。言葉による断片の繫がりは、恋愛小説を読んでいるようでもあって、この物語自体を愛しく思ってしまう。監禁したいと想うほどの絶対の愛は決して異常ではないと考えるし、クミコのような、ちょっと天然で本心がどこにあるのか解らない、だけれど放っておけない純情そうな女を囲みたいという男の心理は何となく理解できる。つかみどころの無い実態のない愛だからこそ、きっと、男は自分を見失うほど一生懸命になってしまうのかもしれない。

    ワタクシ好みの作品で楽しめた舞台!終盤の幕引きは上から降ろされる囲いのセットでキャスト全員がそこに監禁される。という演出は流石!
    石橋の母親役の京子たん!にはウケタ!(^0^)サイコーでした。

    4

    2009/12/18 11:39

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  • きゃる>
    >広田さんは昔、青年団関係のポタライブに参加した際、グループが一緒になり、茶話会でお話して、明るくて気さくなかただなと思いました。そのときはTVのバラエティー番組の会議のときの放送作家みたいな雰囲気で。

    なる!そんなところに出会いが?笑
    ワタクシ、そういうイベントに参加したことがないので素の劇作家を殆ど知らないですよ。貴重な体験でしたね。

    2009/12/21 14:18

    みささま

    ずいぶん以前に、ひょっとこは夫が初見無料モニターで観に行ったこと
    あるんですが、「試みが面白いけど、ふつうのお芝居のような
    ストーリーではなくて難解だった」と言ってたのと、その後、上演時間の長い
    作品が続いたようなので、敬遠してたんですよ。
    でも、今回、みささまのレビューには大変興味をそそられました。
    日程的に無理なのが残念です。
    広田さんは昔、青年団関係のポタライブに参加した際、グループが一緒になり、
    茶話会でお話して、明るくて気さくなかただなと思いました。
    そのときはTVのバラエティー番組の会議のときの放送作家みたいな雰囲気で。
    なんて、勝手な感想をここに書くとファンから怒られちゃうかな。

    2009/12/20 15:21

    きゃる>
    今回のひょっとこはすんごく解り易い舞台です。今までのひょっとことは180度違うといっても過言ではありません。もし、ちょっとでも時間の余裕がありましたら、是非、観てあげてくださいね。一押しですよん♪

    2009/12/20 14:53

    みささま

    ネタバレの細かな心理分析に惹きつけられました。
    とっても興味があるけど残念ながら今回は行けません。
    自分が実際観ても、理解力の違いでこんなふうに理解できない
    と思うので、失礼ながら楽しく拝読させていただきました。

    2009/12/19 13:35

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