11月戦争とその後の6ヶ月 公演情報 アロッタファジャイナ「11月戦争とその後の6ヶ月」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    貫きうる積み重ね
    「王国」は淡々としたシーンの積み重ねに油断をしているうちに
    常ならぬ世界に惹きこまれる・・。

    「11月・・・」はとても完成度の高い作品。
    松枝作劇が見事に機能して、
    がっちりボディを作り上げ
    物語を貫き通しておりました。


    ネタバレBOX

    べたな言い方ですが、
    2作それぞれに
    観る側をしっかりと捉える魅力がありました。

    *王国
    高校生の戯曲といわれても俄かには信じがたかったです。
    冒頭の学生運動の捉え方は、
    やや偏った概念に縛られている感があるのですが、
    個人の世界に物語の重心がが移りはじめると、
    観る側を引きずり込むような力が舞台上に生まれて
    すとんと引きこまれてしまいます。
    主人公の世界がしっかり見えるところまで
    したたかに連れていかれ、
    冷徹にその世界を俯瞰させられる。
    物語の終盤には
    ぞくっとするほどの醒めた視点が
    内包されていて
    それも衝撃的でした。

    初日ということでしょうか、
    台詞のやりとりや重ね方のタイミングなどには
    いくつか気になるところもありましたが、
    青木と野口が手練の演技で物語の枠をしっかり作りこんでいくので、
    よしんば台詞が早く出たとしても
    舞台の空気にぶれがない。
    16歳の役者二人にも末恐ろしいほどの存在感があり、
    観る側が斟酌なく
    真剣勝負で舞台からやってくるものを
    受け止めることができて。

    がっつりと見入ってしまいました。

    *11月戦争とその後の6ヶ月

    松枝作劇の緻密さと切れが良いほうにしっかりと機能して、
    物語に透明感を持ったふくらみが生まれていました。
    シーン毎にはっきりとした色が醸成されていて、
    舞台のニュアンスが明確に観る側につたわってくる。
    そのなかで、物語を単調にしないための、
    ウィットや危さが生きていることにも感心しました。
    安定した密度が作られているので、
    遊び心が物語を育てることができる。
    さらには物語の流れにリズムが生まれ
    観る側が心地よく運ばれていくことができるのです。

    また、この劇団はシーンのつなぎ方がきれい。
    ルデコの5Fはこう使うのだというお手本に思えるほど。
    個々のシーンの余韻を絶妙にコントロールしながら
    次のシーンにつないでいくやり方に
    舞台が強く満ちていく。
    緻密にデザインされた場面たちが
    失速することなくラストのシーンを昇華させる力へと重なって。
    終末観の切なさを凌駕するように貫かれていく台詞が、
    べたなのにびっくりするほど美しい。
    すっと昇華していくような感覚がうまれておりました。

    役者も安定していて・・・。
    鈴木信二は、艶のある役者さんで、
    それゆえ物語の設定に説得力が生まれていたし、
    薄っぺらくならないだけの懐の深さも持ち合わせていて。
    安川に加えて峯尾や井川が
    シーンの枠のなかで何かを伝えるだけでなく
    シーンを育てるような芝居が出来ているのも大きい。
    要所で物語を動かしていく斎藤の演技にも
    観客が身をゆだねるに足りる安心感がありました。

    2作とも、
    この先さらに育っていく部分があるとおもいます。
    でも、初日の段階でも、
    休憩をはさんで3時間弱の公演が
    あっという間に感じられたことでした。











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    2009/11/24 07:14

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