豚と真珠湾 公演情報 秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場「豚と真珠湾」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    敗戦直後の1945年11月から1950年の朝鮮戦争激化までの、石垣島の群像を描く。登場人物は13人だが、一人一人が背負っているものが違い、かなり濃い存在なので、非常に多く感じる。元転向の傷を持つ八重山のインテリ、比嘉長輝を演じた矢野貴大が存在感があった。若いのに見事な老けメイクで好演。駐在巡査演じた船津基は、虎の威を借る小心ぶりが笑いを誘った。

    最初は八重山言葉が目立って分かりにくいが、次第に方言は減っていく(ように感じた)。八重山が、沖縄の中でもまた状況が違っており、知らないことばかりだった。米軍軍政がウチナーグチの教科書作りを命じたが、長輝が「方言は文化だが、共通語は文明」と、反対したのは、言葉を巡る複雑さを考えさせる。
    小作人組合を作るための芝居が成功して、小作人が「団結」して地主と交渉し、小作料を三分の一にする要求が通ったというのも小気味良い。日本から切り離された沖縄で、農地改革がなく、地主制がのこったというのも盲点だった。

    舞台の背景に、南北を逆にして石垣島を中心にした東シナ地域の地図がずっと掲げられていた。いかに東京は遠く、台湾、中国上海はすぐそこか、一目でわかる。そういう場所での歴史と人間たちということで、東京からでは見えないものがある。
    劇の後半、日本や政府、日本人に問いかけるセリフを、相手役ではなく、あえて客席に向けて語っていた。どきりとする演出だが、論点が多く、残念ながら覚えていない。
    2時間半(休憩15分込み)

    ネタバレBOX

    実はこの芝居の人物たちは、見えない血縁で結ばれている。いわば出生の秘密。日系米兵のダンは、料理屋の女主人ナベの、ハワイに徴兵忌避で逃げた夫の息子で、英文の異母弟にあたる。ダンがナベに素性を明かす場面はどきりとさせてよかった。妹タマの父は台湾人のリンだが、これはサラッと触れるだけ。それを兄妹は知っているのだろうか?

    いくつものカップルが生まれ、それが芝居を活気づける。タマと桑原(桑原は言い寄られたのに、結局振られる)、長輝と女密輸業者のアサコ、キクノとダン。

    若い珍吉が、突然BC級戦犯で米軍に連行される。巣鴨に移送されて裁判にかけられる。こんな日本の端っこで、そんな下っ端まで死刑にしようとするとは。やり過ぎに感じた。
    実際にそういう例があったのかもしれないが。復讐心は怖い。

    「ふるさとを愛するのはいい。ふるさとは人を殺さない。国は人を殺す」のセリフはドキッとした。
    「奴隷よりも土人がいい。土人は戦争しない」のセリフも記憶に残る。いずれも長輝のセリフだ。

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    2022/09/15 21:52

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