わが星 公演情報 ままごと「わが星」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    感覚に浸る演劇
    柴幸男氏は、今の若手の演出家・劇作家の中でぬきんでた存在である事は確かだと思います。
    演劇という枠にとらわれず、ヒップホップや様々な影響を惜しみなく作品に投入し、出演者たちとそれらを消化しつつひとつのスタイルを作り上げるところが他の演出家と違うところでしょう。
    演出家はまず「戯曲ありき」で、戯曲の中から自分の舞台をどう組立てるかが仕事となっているけど、それらから全く自由な柴幸男さんの作風が独特なのは理解できます。

    そんな新しい演劇の形の更に進化した姿を目撃する事ができた事が、自分にとって幸せでした。

    ネタバレBOX

    最初に劇場に足を踏み入れた時からその作品世界は始まっています。
    今回も三鷹の自由に組替え可能な劇場の特性を使って、あえて黒の素舞台を作り出しています。
    そして、客席はそれらを囲むように円形に配置されています。
    どこから見ても見やすい親切な作りですね。
    作るのは大変だっただろうけど。。。

    前説明から独特の世界観が始まっていて、「あと10秒ではじまります」「途中4秒の休憩があり」とか、不思議な感覚。

    舞台は最初暗転のまま、大きなステージの4方の端に散らばった役者たちの言葉の連続から始まります。
    ここでシアタートラムの「ハイパーリンくん」を思い出しました。

    その後明転してからは、役者さんたちが同じ感覚、同じリズムで真ん中の白い円の周りを同じ方向に回りつつ言葉を発します。
    それは決して会話になっているわけでもなく、単語が飛び交うという感じ。
    でも、それがリズムに合わせて繰り返されるというだけで、中毒性ないつまでも見ていたいと感じさせるものが生まれます。

    100秒(でもない)で語った星の一生を、今度は80分に縮めて(?)上演します。
    そこでは46億10歳の「ちーちゃん」とその家族が団地で生活しつつ、その一生をままごととして見せていきます。
    「ちーちゃん」は当然地球の事で、地球が小さな女の子、という解釈もとても面白いです。
    「つきちゃん」とのままごととは言えないような、リアルでささくれ立ったままごともおかしい!

    そして、そんな地球の一生を望遠鏡で観察し、「先生」と対話をする少年。
    「先生」と少年がザッピングで入れ替わったて会話が進むのだけど、このザッピングは正直なところあまり効果的ではなかったような気がしました。

    後半になるとザッピングしなくなって、メガネの男性が「先生」と固定化されて、「こうそく」(光速と校則を掛けてるのもおかしい!)を超えて、地球とその世界の中に入っていきます。
    そして少年もその世界に段々近づいていていって、最後の最後、「ちーちゃん」と少年は出会うのでした。

    スケールの大きな話を団地の一家の生活に被せ、笑いも入れつつこれだけのものを80分間にまとめて見せてくれた柴幸男氏の才能が凝縮された作品でした。

    この宇宙の長い歴史のなかで、たった数日間しか上演されなかったこの作品に出会えた幸運と奇跡を大切にしたいです。

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    2009/10/13 01:43

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