タルダンス・カンパニー/ムスタファ・カプラン-フィリズ・シザンリ「DOLAP」 / 鈴木ユキオ/金魚「犬の静脈に嫉妬せず」 公演情報 ダンストリエンナーレトーキョー「タルダンス・カンパニー/ムスタファ・カプラン-フィリズ・シザンリ「DOLAP」 / 鈴木ユキオ/金魚「犬の静脈に嫉妬せず」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    地震国のダンス
    ダンストリエンナーレの第8弾は、トルコと日本の作品の2本立て。
    トルコとコンテンポラリーダンスという言葉の組合せがそもそも矛盾しているのではないか、と冗談をいいたくなるくらい、今回のフェスティバルではいちばん異色というか、単純にいって珍しさを感じる作品。
    もう1本は初演を見たことのある鈴木ユキオ振付作品の改訂版。
    両者の内容に共通点は感じられなかったが、結果的にはどちらも面白かった。

    ネタバレBOX

    トルコからはタルダンス・カンパニーの男女二人が出演。タイトルは「Dolap」。初演は9年前にパリで。大型冷蔵庫サイズの直方体の箱が重要な役割を果たす。要するに、人間2人と箱1個によるコンタクトだと思えばいい。
    出演する二人の衣裳は裾が短めのズボンと半袖のシャツ。それにニット帽の縁をひとつ折り返してかぶっている。
    開演して登場すると、端に寝かせてあった箱を中央に移して立てる。箱を挟んで二人は、互いの足が箱の方を向く形で、直線上にあお向けに横たわる。そのままならただ人も箱もじっと静止しているにすぎない。そこでまず、一人が横たわる前に箱を、先に横たわっている相手の方へゆっくりと倒す。倒したほうもすぐに横になる。すると、傾けた箱はそのまま反対側の寝ている人間に向かって倒れていく。体が箱の下敷きになる寸前に、相手は両足を上げて倒れかかった箱をキャッチする。そして今度は相手のほうへ箱を蹴って倒す。これを交互に続ける。
    次はいったん両足で箱をキャッチしたあと、数十センチほど体を移動させてからまた箱をキックする。倒れる位置が少しずれたので、相手も数十センチ移動しないと箱をキャッチできない。
    最初は二人の間を箱がメトロノームの振り子のように行き来していたが、今度は、常に反対側にある時計の針のように、箱を中心点にして二人がその周囲を回り始めるのだ。その間も仰向けに横たわったままで箱はキックしている。
    次は一人が箱を両足でキャッチした瞬間、もう一人が跳ね起きて、傾斜したまま止まっている箱の上に乗りかかる。バランスよく形が決まってところで元の位置にもどり、今度は立場を逆にする。
    その後も次々といろんな動きが繰り出すのだが、派手ではないものの妙に意表をつく動きの連続で、最後まで面白く見た。中盤ではそれぞれがソロで演じるパートもあった。
    演じる二人は生まじめに黙々とパフォーマンスをこなしていく。その雰囲気がどことなく神村恵カンパニーのミニマルな作品と似ている気がした。動きそのものよりも、取り組む姿勢が。
    出演者二人の経歴を見ると、男性のムスタフォ・カプランは大学で電子工学と電気通信学を学び、女性のフィリズ・シザンリは工業大学の建築学部を卒業したとあり、ともに理系のインテリだという点が興味深い。さしずめこの公演は「重さとバランスに関する調査研究」だったのかもしれない。

    鈴木ユキオの「犬の静脈に嫉妬せず」は3年前にこまばアゴラ劇場でやったのを見ている。とても好きな作品だったので、また見られるのが楽しみだったのだが、出演者の人数が減っているうえ、美術もすっかり違うものになっていたのがちょっと残念だった。ただし、見覚えのある振りはちゃんと残っていた。客席に向かって遠投するところとか、胸板を叩きまくるところとか、ワイシャツの襟元や裾を開けて相手に誇示するところとか。
    出演者4人のうち、安次嶺菜緒と鈴木はよく体が動くぶん、動物的というか獣的な印象が強い。あの引きつったような動きを見ていると、いつのまにか自分の指にも力が入っていたりする。共演は川合啓史と寺田未来。

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    2009/10/06 00:08

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