花とアスファルト 公演情報 青☆組「花とアスファルト」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    大人の童話
    川上弘美の「神様」を題材にしたらしい。川上弘美の作品はかなり前に夢中になって読んだ時期があって、確か10冊ほど読んだ頃、飽きて読まなくなった作家だった。なぜ飽きたかというと、川上の書く短編は幻想的な世界といえば聞こえはいいが、まったくの嘘話で、登場人物というか登場動物が変わっていて、蛇だったり河童だったり龍だったり人魚だったり、熊だったり・・。文章自体もひじょうに読みやすく中学生向きの作家レベルだから、東野圭吾や北重人の文章力と比較するとあまりにも幼児性が強いと感じたからだ。
    だから、それに平衡して今回の小夏の作風はどうしても童話的要素が強くなっている。

    以下はネタバレBOXにて。。

    ネタバレBOX

    それでも川上の作品は読み終わった後にほのぼのとした透明な優しさに包まれる。そういった意味では小夏の描く世界観と川上の世界観は同じ線上にあるのかもしれない。

    すみれが原団地に引っ越してきたクマは明らかに異質で異文化の生きものだから、人間たちに受け入れられない。それでも紳士的なクマはどうにか馴染もうと頑張るが、やはりそこには大きな見えない壁が立ちはだかる。
    クマは「クマの神様の祝福が皆様の前にも降り注ぎますように。」と常に思っているが、当の人間たちには響かない。

    やがて人間の中にもクマと仲良くなって家族のように親密度を深める人も出来るが、全員ではない。クマと人間。ここでの人間は個々は悪い人ではない、ほんとうに。ただ、とても大切なことに気づかず、そこを土足で踏んでしまうだけのことだ。
    人間の住民たちの会議での外面、家族の中の風景での内面の、反面の描写が面白い。子供に甘える母親がいて、子供はそんな疲れてる母親を思いやる。

    そして紳士的なクマは仲良しの鈴木さんに森(故郷)に帰ることを告げる。馴染みきれなかったのだといいながら。人間たちの日常はクマが居なくなってもなんら変わることはなく、同じように守るべき何かを持って、負けたり勝ったり、相手を傷つけたり、傷つけられたり、嘘を言ったり、喧嘩をしたり、そうやって自分をだましながら折り合いをつけて暮らしていくのだ。

    こうしてクマは二度と街に戻る事はありませんでした。

    じんわりと心に温もりが広がってくる芝居です。クマ役の荒井志郎と鈴木役の羽場睦子のかかわりと演技がいい。



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    2009/08/02 11:43

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