旅がはてしない 公演情報 アマヤドリ「旅がはてしない」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    家に帰ろう!
    当初、機械的で冷たい物語と思ったけれど、観ていくうちに若者特有の感性溢れる作品だと感じた。いささか抽象性が高いけれど、そのぶん普遍性も高いような気がする。

    ミネストローネは場所ではない。音楽を聴いてる輩たちが自分自身をシャッフルするというイベント全体を指す。主役はトウゴウ。トウゴウは皆が集まる道を作り秩序を作り、ルールを作り、王となる。要はゲームのような感覚。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    ひじょうに面白いと感じた。

    ここでのルールは道での秩序を守ること。という漠然とした掟があったが、それぞれの若者は騙される方が悪い、なんて勝手に暗黙のルールに変えていってしまう。当然のことながら、詐欺、盗みを実行する輩が出てくる。それでも彼らの日常は悪びれることなくポップで躍動的なダンスを踊る。

    ある日、ミネストローネというシャッフルするイベントが始まる。シャッフルとは別の空間に行く事だ。自分のイメージの場所に行けるかもしれないし、行けないかもしれない。キャラクター達は意識は自分だけれど、別の固体(他の身体)に移動する事が出来る。意識と身体の離脱だ。「人は自分の身体を離れても存在する事が出来るか?」トウゴウはそんな考えを繰り返しながら、固体の入れ替えで今は継ぎはぎだらけの身体になっている。
    しかし、キャラクターによっては意識をも忘却してしまうキャラが出てくる。意識は完璧ではないのだ。だから昔の恋人を忘れてしまっていたりする。すると恋人のほうは身体が変わって記憶を失った意識のキャラクターを自分の昔の恋人なのだと気付かない。

    そんな雑多なキャラクターが行きかう道(若者が集まる広場)にも「この道を作ったのは僕たちだ。」と秩序を正そうとする者が現れる。「忘却と再生のインプラントがこの道の土台になっているのだからファッション感覚で犯罪に手を染めないように。」と注意をする。それがこの道の管理人であり、ガクシャらだ。

    やがて道の管理人の命と引き換えに命を助けてもらったヒカリは管理人の希望を受け入れ、改心していく。

    希望と絶望のインプラント、記憶と忘却のインプラント、問いかけと記憶のインプラント。それらは表裏になって刻み込まれているのだから何度でもやり直そう。何度でも絶望して何度でもやり直そう。という希望に満ちた作品。

    トウゴウとアイス、ボルボ、飛脚のゴルフショットのシーンが楽しいです。笑える(^0^)
    やがてトウゴウは継ぎはぎだらけの身体から脱却する為に新しいキャラクターを必要とする。その標的がアイスとボルボの身体だった、というオチ。この意外性にびっくりするがこれがゲームの世界ならどうだろう?きっと抵抗がないのだろうと思う。
    トウゴウはギクシャクしながら歩く。自分の意識でキャラクターが上手く操れないのだ。個体と意識が離脱したようにギクシャク・・カクカク・・ギクシャク・・カクカク・・どっちの足を先に出してどっちの手を振ったらいいのか意識が混沌とするなか、トウゴウは美しい海のシーンに意識が飛ぶ。たぶん、この時のトウゴウは絶望の淵にいる。かつての道の王だったものが自ら秩序を乱して蠅に成り下がり、背中を壁に付いて絶望の淵に居る。

    そんななか、キュー(トウゴウの娘)が「帰ろう、家に。帰ろう!」と傘を差し出すんだよね。見守るケイ(道の管理人)とカサ(以前のトウゴウの身体)。
    無限大の青い海が広がるなか、トウゴウは帰るのです、家に。
    この時にやっと人間らしい心に戻ったトウゴウ。
    トウゴウ役のキャスト、チョウソンハの演技が実に光ってます。素晴らしい!
    物語はひじょうに優れた本だと感じた。

    傘をさしてあげて「家に帰ろう。」というセリフ、これほど優しい言葉はないのです。

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    2009/07/21 18:33

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