愛のルーシー 公演情報 北京蝶々「愛のルーシー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    力作、意欲作、目の付け所の違い。
     最近日常を等身大に描く劇団が増えている中、北京蝶々はシチュエーションやドラマの設定を大事にする劇団である。

     まず、バイオスファイア2に目をつけ、これを元にドラマを作ろうと思ったことに作者の(演劇的)意識の高さを感じる。そしてこの難しいテーマを個性的な登場人物の設定で非常に見やすいものにした。

    ネタバレBOX

     バイオスファイア2とは実際にアメリカで行われた環境実験の名称。将来人類が宇宙に移住するとしたら、閉鎖された狭い空間で生活していけるのかとか、地球と同じ生態系を人工的に作り上げることが出来るのか、などを調査する研究だった。この研究は何百億円をかけたにも関わらず、たった2年で失敗に終わっている。原因は閉鎖空間での心理的ストレスや、それによる人間関係の崩壊によるものと言われている。

     環境問題に興味を持ち、バイオスファイア2の実験物語を知っている人と、そうでない人とでは面白さが全然違ってくる。そこら辺がこの作品への評価が分かれるところだろう。舞台上で繰り広げられる愛憎劇や裏切りなども、それが閉ざされた空間の中での心理的ストレスの中で引き起こされていることだということをしっかりと認識して見なければ間違ってしまう。

     作者が秀逸なのは、閉ざされた空間で暮らす人と、それを観察する人の対比の部分。それはあたかも神と人間のような関係だ。しかし、最後に観察する側の人間がルールを破って、閉ざされた空間の中に入ってくる。ここで物語は大きく動く。地球は滅びるのかはたして再生するのか?神はいるのか?救いはあるのか?救世主はいるのか?そういった様々なテーマを考えさせながら、壮大なドラマが幕を閉じる。

     役者はそれぞれ個性的で魅力的だが、特にイナカを演じた帯金ゆかりの存在感は群を抜いていた。また森林をうまく表した舞台装置、それぞれの場所を美しく照らし出した照明など、スタッフワークにおいても随所で光ところがあった。上演時間は90分。

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    2009/05/23 01:24

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