農園ぱらだいす 公演情報 劇団匂組「農園ぱらだいす」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    公演は主に観(魅)せる面と登場人物、特に女性たちの揺れる心情、そして力強く生きる面、そんな二面を描いた物語。そして何よりも、今の社会(生活)を映し出すドキュメンタリー的な描き方だと思えた。
    舞台は東京近郊にある農村の家…何となく立松和平の小説「遠雷」(映画化もされた)を想像したが、そこまでの土着性はない。どちらかと言えば、副題にある~愛しのアマゾネス~の方がピッタリだ。
    ジェンダーと言うには少し大げさかもしれないが、離婚した女性や何となく婚期?のタイミングを逸した女性に対する社会的偏見が垣間見える。
    コロナ禍という状況にあって、やはり”生で観劇”できるのは嬉しいし、楽しませたい、そんな思いが伝わる好公演だ。
    (上演時間1時間40分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは中央奥に板塀のようなものが立ち帽子等の小物が吊るされている。その前に横長テーブル、上手・下手側に農家らしい幟やダンボールが置かれている。ここは主人公・川村園子(清水優華サン)が住んでいる家の離れ、そこで明日行われる地元祭りの準備をしている。彼女は、独身女性がこの集落にいないことから、30代後半になっても巫女をやらせられると愚痴る。大きな出来事はなく、祭り前日の1日を淡々と紡いでいく。そこに集落の住人や離婚等をして故郷に戻ってきた園子の友人との語らいを通して女性ならではの悩みや問題をコミカルに描く。

    当日パンフによれば、舞台になった集落は特定の場所ではないが、東京都心への通勤圏内を設定しているらしい。都内で働きたいという願望と何か困った事があったら実家や周りの人々に助けてもらえるという安心感。そうした背景に、登場人物の置かれた立場や状況を子供の小学校受験や園子が勤めている会社での処遇(お局様扱い=扱い難い)などを絡め悲哀を込めて点描していく。また園子と小中高校の同級生だった大沢水木(大木明サン)との不器用でぎこちない愛情表現を微笑ましく挿入する。全体的に女性の視点を通して個人情況と社会状況を上手く融合させ、日常生活を通して社会批判が垣間見えるようだ。

    自分が1番印象に残ったのは、園子の隣家の娘・原田葉子(金井由紀サン)が妊娠して、帰郷してきたシーン。家を飛び出したために実家に戻り難い状況、一方、本人は妊娠し不安な状態。その気持を察し、園子の母が父親がいなくても集落全体で生まれてきた赤ん坊を育てると力強く言ったこと(無責任に発言できないが…)。東京には東京の利便性や華やかさがあり、その近郊には地元を愛し、困った時には助け合うという共同体の良さもある。物語はそのどちらも語り、職・住接近の良さが見えてくる。もしかしたら新しい生活様式を意識したか?

    当日パンフで演出家の鈴木アツト氏が劇作と演出を料理に喩えると、「レシピ」と「料理」の関係 と書いている。キャストを個性的な野菜と表現している。その野菜たちは実に生き活き(歌も歌い)と生活感を溢れさせ、その体現力をもって祭り前日を味わい深いものにしていた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2020/10/18 12:35

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