第14回 シアターΧ 国際舞台芸術祭2020 公演情報 シアターX(カイ)「第14回 シアターΧ 国際舞台芸術祭2020」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    第14回シアターX国際舞台芸術祭2020 ⒒日目 2020.7.7 19時
    (追記7月8日02時39分、七夕公演 全体評価5つ☆)7月9日は19時からの公演 

    ネタバレBOX


    1:望月太左衛社中 剣伎衆かむゐ&剣伎道。演ずるは、和楽器が彩る剣伎・侍魂「未来へ~Samurai still exist」自分もそれなりに和楽器は拝聴してきたつもりであったが、今日初めて聴く音も多く、最初に用いられたのは空気をまさしく切り裂くような音を発する笏拍子で、これには度肝を抜かれると共に、かむゐリーダーの島口哲朗さんが上手ホリゾントの奥から舞台中央へ隙の無い登場を見せるシーンは慄然とするほどの気を内に秘め、正しく武人を見た思いがした。

     終演後に伺ったことを基に書くと、メソッドとして剣伎道を創設しそこに殺陣、居合、新陰流、空手やマーシャルアーツなどの要素を織り込みつつ舞うように演じているとのこと。どんな格闘技も基本は、間合いを見切る動体視力、己の力を最大限に・或は殺して常に重心を安定させスムースに移行・受け即攻めに転じる動作にあるが、攻めでは無論最大限の力を効果的に用いる。実際の戦いはままごとでは無いから、自分が死ぬかも知れないし相手を殺すかも知れない。日本刀は剃刀程に良く切れる。

     一方東洋の哲学は、陰陽五行説に負う所が大きく、陰陽・五行共に有為転変の関係を現す、同時に仏教による六道輪廻なども転生という考え方は人間中心の発想と異なり他の生き物との関係性を説いている。更に老荘の思想は、無為自然・柔弱謙下という言葉にも示されているような摂理を活かす思想であるから、宇宙的エネルギーを気として己に取り込み、これを上手にコントロールしながら用いることに繋がる。無論、物理学的な説明も可能である。武道の達人の動きは、皆一つの例外も無く、最も合理的な動きになる。琉球舞踊も基本は武術、殊に王を護って外交などにも重きを為した王族出身の高級士族には必須の素養であった。実際格闘技としても強い。

     ところで今作は、舞台芸術でもあるので、武術だけで成り立っている訳ではない。人として守るべき矜り、道を究める為に払わねばならぬ大きな犠牲、他人の痛みを知り生きる哀れを知る仏性、決断する勇気、そして総てを統合し判断し責任を負う覚悟及び判断し実行する行動力を統合した生き方。これこそまさに武士道の理想であろう。この理想を台詞無しで見事に伝えているのは以下のシーンだ。未だ5つ位の男の子とその母が2人の武士に追い掛けられて客席方向から登場する。敵う訳が無い。子供は腰に刀を帯びてはいるものの小刀である。母子は当初、切り掛かる刃を躱すが、遂に追い詰められ、子を庇った母は、先ず浅手を負ったものの子を覆うように庇いながら向かい来る武士の1人に子の刀で応戦、傷を与えた。然しそれまでであった。母は子を庇ったまま、惨殺されてしまった。2名の武士は更に子を追って迫る。子も武士の子、落ちた小刀を拾い上げて応戦している所を1人の武士が通りがかり子を襲っていた2名を斬る。子は母の遺体に追い縋って悲嘆にくれていたが、やがて助けてくれた武士を頼り去った。青年になった子に稽古をつけている件の武士の様が描かれ、力をつけてゆく若武者の姿の後、更に腕を上げた青年と育ての親が木剣で試合をしている。青年もかなりの腕になった。武士は真剣に持ち替え、青年にも促す。青年も真剣を持ち、戦いが始まった。一番勝負では一瞬の隙を突き武士が青年の右二の腕を切った。一旦、参りましたの所作があって二番目の勝負、義父が撃ち込んで来る所、胴を払って青年が勝った。青年が大人になる為のイニシエイションと取っても一子相伝と取っても良かろうがこの流派が継承されるシーンも実にドラマチックだ。

     武士の妻や娘のたしなみである長刀の剣舞と殺陣も披露されるが、長刀の柄の先には赤い房紐が付けられ女性の剣技を実に華麗なものにしているのもオシャレ、更に数歳からミドルティーンに至る多数の女子剣士、男子剣士を交えた群舞も見事である。流石に国際的な舞台で賞も受賞しているだけの実力者グループ、新型コロナで練習・稽古の時間も中々取れず、皆で集まることも殆どできなかったということが信じられない見事な剣技・舞台だ。感心したのは、メンバー全員が、謙虚で爽やかな集団であることだ。無論、様々な和楽器など(和太鼓、鼓、雨団扇、和鈴、二胡、横笛、尺八など)の演奏でアクションを盛り上げて下さった望月太左衛社中とのコラボも素晴らしい。華5つ☆
    Ⅱ:こかげ舎による演劇公演「いまはむかし(虫愛づる姫とノア博士)」出演は、ノア博士に小林拓生さん、虫愛づる姫に佐々木和子さん、ちょっと変わった楽器・GANKなどでの演奏に中馬美穂さん。GANKは、耳慣れない楽器だと思うが見た目は、ちょっとへんてこりんなUFOとか、炊飯ジャーのような形の楽器でプロパンガスボンベの材質を用いて作られ、その上部のあちこちに逆Uの字型などの溝が彫られていて、その溝の幅や長さなどによって異なる音が出る。奏法は木琴のように叩いたり、こすったり色々だ。何れにせよ、中々不思議で魅力的な音が出、形もユーモラスなので一度調べてみると面白かろう。脚本は、姫を演じる佐々木さんが書いた。一応、環境破壊を重ねた人間の愚かさが招いた近未来を舞台にしたディストピア作品ということが出来よう。理性的に考えれば、人間が今のように愚かな生き方を続けてゆけば誰が考えても地球に未来は無い。このことは余りに明白である。因みに地球上で起こっている波や風は地球に注がれる全太陽エネルギーの僅か0.2%の影響だ。一応述べておくと日本政府がF1人災後もベース電源として強力に推し進める原発は、100万KW級1基で1秒に70トンの水の水温を7℃上げる。70トンの水量とは多摩川と荒川2本の川の流量/secを合わせた程の膨大な量である。温められた水の中に溶け込んでいたCO2も当然蒸散する。馬鹿な話ではないか。言っておくがこれはほんの一例に過ぎない。誰も問題にしないが何の役にも立たない煙草もCO2を輩出している。税を高くすれば良いという問題ではあるまい。
     物語に戻ろう。今作では主に温暖化によって極の氷が溶けだし水位が高くなるのみならず、高温化によって降雨量が全地球規模で極端に増加した結果、生物の大量絶滅が起きる世界に突入する前夜譚として話が進行するのだが、興味深いのは、AIの発達によって人々は、大量データの処理をAIに任せっきりにしていた為、真に優秀で発想にユニークさや飛躍力のある知恵を評価し得なかった頃のデータが基礎データとしてインプットされていなかったが故に姫のような本質的で独特な発想のできる有能な研究者はリストラ対象となりラボを追われていた点である。ノア博士も解任の憂き目に遭った。こんな事情からノア博士はかつてのラボで自分の下に居た最も優秀な研究者である姫の所へサジェスションと別れの挨拶をしにやって来たのである。博士はラボを馘首されたから、単なるノアに戻っており、ノアは、地球上の虫以外の総ての生命を護る為の箱舟を作り、姫には虫の為の箱舟を作って欲しいとの依頼に訪れたという訳で洒落の掛かった落ちになっている。劇中、歌で表現するシーンがあって佐々木さんのソプラノと小林さんのテノールがバランス良く、良い具合に響き合いこれも楽しめる場面となっている。5つ☆
    Ⅲ:宇佐美雅司さんのソロ作品。作・演・出演総て1人でこなした。タイトルは「Listen to the He:art~愛でてエな~Need is Love」七夕の夕べ、織姫・彦星年1度の逢瀬の日、パンデミック・COVID-19の前に人類などと恰も連帯が生まれてでも居るかのような紛らわしい表現も馬鹿らしいが、殆ど世界中の為政者が、非科学的、非現場主義的、非合理的、非理性的判断によって舵取りを誤り、自らフェイクを撒き散らすTのようなウスノロ、パシリでミムメモのA、裏切りだけは一流のKらと、不作為によって殺人者となりながら、不作為故に罪を追求されない厚労省、文科省の高級官僚、経産省とその天下り先法人等々のトンネル組織。こんな連中とグルの政治屋、マスゴミ。こういった下種に媚びへつらい己の頭を用いて考えることのできない「臣民」くたばっちまえ! と小生は思うのだが、舞台人である宇佐美氏は、何とかこのめちゃくちゃを皆に欝発散の機会を共有してもらうことで発散してもらおうとでもしているようだ。自分と現実認識は可成り異なろうが、この意気を評価して4つ☆。

    2

    2020/07/08 21:45

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  • 宇土修さま。
    早速のコメント有難うございます。
    喜んで頂けたようでうれしく存じます。
    動きの激しい舞台、御怪我なさらぬよう
    お気をつけて、皆さまにもよろしく
    お伝えください。
            ハンダラ 拝

    2020/07/09 02:44

    ハンダラ様

    この度はご来場、そして素敵なレビューもお書き頂いて本当にありがとうございます。
    頂いたお言葉に恥ずかしくないように一同これからも精進して参ります。
    今後とも宜しくお願い致します。

    剱伎道 宇土修

    2020/07/09 01:14

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