第14回 シアターΧ 国際舞台芸術祭2020 公演情報 シアターX(カイ)「第14回 シアターΧ 国際舞台芸術祭2020」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    第14回シアターX国際舞台芸術祭2020 10日目 2020.7.5 14時半
     本日も3組の出演である。10日目の原稿が先に上がってしまった。次回公演は7月7日19時開演。

    ネタバレBOX

    I:堀ゆかりさんと別所るみ子さんのダンスユニット・Y&Rが演ずるのは「水・光・身体」という作品。タイトルから直ぐ分かるように命に纏わる諸関係(始原の生命と誕生に寄与した水、光、エネルギーなどと化学反応、アミノ酸複合体から体を構成するようになる生命誌等々)が優雅なダンスで表現される。ダンサーの動きの中で交差する眼差しに意を用いている所に極めて女性的で繊細な表現が感じられる点もグー。用いられた音響器具は、チベットのティンシャや波音などを出す小型の装置。衣装も2人揃った素敵なデザインでダンスを更に優雅に見せるのに役立っていた。ところで、自分もかつて極めて質の高いティンシャを持っていたのだが、今回使われたものは恐らく銀の含有量が少ないか真鍮製なのであろう。自分の持っていたそれに比べると響きが余り良くなかったのが残念だが、現在では良質な物は殆ど入手できまいから仕方ない。5つ☆ 
    Ⅱ:足立 七瀬さんによるソロダンス。タイトルは「選んで、いる。」日本人には珍しく、選択ということを正面に据えているので驚いて帰宅後、当パンを読んでみると(自分は作品を拝見する前には基本的に一切、当パンは見ないことにしている。刷り込みをしたくないからだ。推理作品などで予め見ることを要求される場合は別であるが)略歴を拝見して納得がいった。フランス人の振付家の関わる国際ダンスワークショップのオーディションに受かって「Harakiri」という作品に参加していたのだ。解剖学なども用いながら踊る身体を追求しているとのことはある。極めて優雅な動きから日常的にさえ見えるような動き迄、洗練、日頃の何気ない動作まで織り込んで“選択”の幅を広げているが、暗転させて明転に移行する際、必然性を感じない部分もあった。この辺りをもう少し詰めて欲しい。更に欲を言うなら、選んだつもりが選ばされているという資本主義の中で暮らす我らの姿をも描ければ。華4つ☆ 
    Ⅲ:シニアの演劇ユニット・夢桟敷によるミュージカル風演劇作品『Question・・・いのち愛づる姫から』は、生物学者の中村桂子さんの著書「いのち愛づる姫―ものみな一つの細胞から」をベースにした作品だ。原初我々の遠い祖先であるバクテリアの類からミトコンドリア、ボルボックス、海月や魚を経て陸に上がった生物の産む卵も受精するまでは1個の卵細胞である。始原の生命を単細胞から始め、個々の生き物の始まりを矢張り細胞分裂する以前の一つの細胞から始めている所にミソがあろう。個体発生は系統発生を繰り返すという良く知られた事実をも思い起こさせる、本質的でありながら極めて分かり易い摂理である。
     シニアといっても平均年齢は可成り高いので、かむ方がいらしたのは残念であったが、どういう訳か偉く楽しい作品であった。つらつらその訳を考えているうち、若い頃に読んだリルケの一節を思い出した。それはこんなフレーズだった。
    “若者とは既にして恐るべき老人なのだ。それを意識した上で、それを意識した上で若さを装うのだ!”という一節である。自分と同じことを考えた詩人が居たのだ! と二十歳を越えたばかりの自分は、少しだけ安心した。当然、その頃の自分は生意気を絵に描いて壁に貼り付けたようなガキであったから可成り鼻もちならないガキであったろう。と同時に急に勉強をし始めて知識を吸収することに忙しく、要するに自分のオリジナリティーの乏しいことは散々意識させられていたから、己自身を単に先人が積み上げてきたことのコピ―としか思えず耐え難い老いを内側に抱えていたのである。
    だがこの劇団の演者には、このような意味での老いが無い。皆さん自ら楽しみ己の人生で培ってらしたことを体中から溢れださせるように活き活きと創っていらっしゃる。これこそが、この楽しさの源泉なのだと感じさせられた。素敵である。5つ☆

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    2020/07/06 14:09

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