第14回 シアターΧ 国際舞台芸術祭2020 公演情報 シアターX(カイ)「第14回 シアターΧ 国際舞台芸術祭2020」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    第14回シアターX国際舞台芸術祭2020 6日目 2020.6.27 14時半
    6日目の出演は、3組。(追記2020.7.1)本日28日も14時半から『いきもの絵巻・・・」の後、アートカンファレンスがある。

    ネタバレBOX


    出演順にⅠ:松本 隆彦さん、ベートーベン生誕250年ということと、COVID-19災禍に苦悩する地球市民への連帯を目指して「アパッショナータ」を今作タイトルに選んだピアノ独奏、人口に膾炙している「エリーゼの為に」を元とした演奏を披露した。久しぶりの生公演ということもあり、序盤第1音の重さを感じて、その心理状況が演奏に影響を与え音に艶と生気が欠ける点は観られたが、テクニックは無論高い。「パッショナータ」を弾く頃には正常な精神を無論回復していたが、タイプとしては、職人的なピアニストという印象を受けた。どういう意味か? 所謂天才は、兎に角、ステージに上がった瞬間から外側からそう見切る者が居なくても途轍もなくテンションが高いとか、徹底して深い自らの決定的な瞬間から始めることができる。その点が異なるのだ。華4つ☆
    Ⅱ:東京ノーヴィレパートリーシアターの菅沢 晃さんの一人芝居は、ドストエフスキーの「白痴」から『ムイシュキン公爵のモノローグ』。癲癇の療養でスイスの寒村で過ごした4年の追想を述べるという形を取る。今作、長編「白痴」の長大な文章群の中の白眉ともいえるパートであろう。公爵といえば通常貴族の最高位だが、そんな高い位にあって尚ムイシュキン自身が白痴と見做されるのは、無論彼が赤心で生きているからである。
    当然のことながら、出会った当初は兎も角、暫く経ち子供とのコンタクトが生まれた後は、子供たちに好かれる。その彼が癲癇の療養で出掛けた他国(スイス)の田舎の村で村の下働きをして病気の母を支え、いつも蔑まれている若い女性(マリー)が通りがかりの馬車に乗った若い外国の男に拉致され捨てられて、ボロボロの状態で村に徒歩で辿り着いて以来、村人たちは彼女を八分にした。が何より痛ましかったのは彼女の母が最も熾烈に彼女を罵り傷つけ、家から追い払ったことであった。母は彼女が「母の顔に泥を塗った」と責め追い出したのである。追われた彼女は雨露を凌ぐ屋根も寒風から護ってくれる壁も無く、更には彼女に唾を吐きかけ酷い言葉を浴びせかける親たちの真似をして石を投げたり、意味も分からず罵声を浴びせる子供たちの恰好のターゲットとなっていた。然しムイシュキンは、彼女の身に振り掛かった不幸に同情し庇う。初めのうちこそ子供たちはムイシュキンにも石を投げたりしていたが、ムイシュキンが彼女の被った不幸を彼らに話してやると、子供たちの態度が変わった。胸を病んでいた彼女が遂に倒れ病の床に就き、外出すら適わなくなると、子供たちは代わりばんこに彼女の看病をし、野の花を摘んでは彼女の枕元に飾り、貧しく全く余裕のない生活の中から何らかの食べ物を運んで彼女に供した。然し彼女は遂に身罷る。村中の子供たちが集まって棺桶を設え彼女を墓に運ぼうとしたが、重くて叶わなかった。興味本位に集まっていた大人たちの手を借り、子供たちみんなが棺を担いで墓地へ彼女を運び、彼女の遺体には子供たちの摘んだ野の花が添えられた。以降彼女の墓に花の絶えることは無い。不幸だった彼女の人生の最後に彼女は本当の幸せというものを手に入れた。これが上演された今作の粗筋であるが、ムイシュキンが癲癇持ちであることには、ドストエフスキー自身が投影されていると見るのが普通だろう。ドストエフスキー自身、死刑になる所を流罪に処され、刑を終えて帰って来てからは頻繁な癲癇の発作に悩まされ続けたことは、誰でも知っていようから。華5つ☆
    Ⅲ;高 瑞貴さん、宮本 悠加さん2人のダンス公演、タイトルは絶滅させられた飛べない鳥で、ルイス・キャロル作品にも登場するドド、作品タイトルは「dodo」表記。5つ☆
     切っ掛けや動作など作品全体の3割程度を予め決めていた他はアドリブやインプロヴィゼイションで演じたとのこと。ドドの形態模写を中心に演じた高さんは、子供の頃から舞台・ミュージカルなどの素養があるので動きは可成り良い。同時に余り意味に縛られることなく自由なイマージュを身体化している点に新鮮味があって面白く拝見した。舞台の使い方も面白い。ホリゾントの上手壁を構成しているパネルの下半を4枚外して、その奥から鳥の動きで登場したりするのだが、下手ホリゾントと衝立の間に脚から上を隠した状態で横たわった宮本さんがラストを除く殆どのシーン脚だけを用いてのパフォーマンスを披露しているのだ。

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    2020/06/28 12:25

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