メモリアル 公演情報 文学座「メモリアル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    地点による上演「忘れる日本人」「山山」で登場した新鋭・松原俊太郎(新鋭なる呼称が古いか?)の書き下ろし舞台を、演出経験を持つ俳優・今井朋彦が本拠地文学座で企画し、上演した。
    今井氏は20年以上前から青年団に傾倒し、そこを母胎とする地点の独特な舞台にも触れて刺激を受けたという。松原氏の戯曲が地点の手法以外で果して舞台化され得るのか、これが最大の関心事であり、文学座としてはかつての別役戯曲以来の「文体」との格闘となるのではないか、と予想したが、挑戦は確実な成果を手にし、新しい一歩を標したと私には感じられた。勿論地点とは異なる方法で、である(本質の部分では共通項がありそうだが)。
    何より松原氏が書きなぐった言葉が鋭角的でありながら熱情を帯び、身体の脈動が視覚的刺激を絶やさない地点に比べ、こなれない身体を通した言葉が迷走する時間もあったが、斬られた断面が放つ生々しさを持つ言葉は乱暴に、かつ繊細さをもって脳を打って来た。

    ネタバレBOX

    3×2の男女は幾つもの役を持ち、この数では恐らく一度やった同じ役に戻る事はなさそうだ。役の割り振りは観劇中は判然とせず、ただただ場面は二人か三人の会話もしくはモノローグが吐かれる場所、という以外の説明は殆どない。全く状況説明的でない台詞によって醸し出される空気、関係、社会事象の断片と彼らとの距離感だけが観客には伝わって来る。そしてそれでも十分ではないか、という気にさせる。俳優はその優れた媒体になり切れたと言えないかも知れないが、現実には決して吐かれない「現実暴露」と「希望」の言語を彼らはともかくも届けるべく精一杯やっていた。

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    2019/12/11 13:30

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