満足度★★★★
『寿歌』と言えば昨年のSPAC版野外劇が初にして珠玉。これを超える事は期待しないにしても、冗談半分の(と見える)乾電池の料理法は如何ばかりと不安7割、だが江口のりこまで出張るなら一応ちゃんと作るのではと期待3割。
ところが意外や面白く、戯曲にちゃんと向き合って作られた舞台であった。
乾電池では2011年頃の初演以来何度か上演され、変らない配役がゲサクの西本竜樹、芸人風情が存在そのままで板につき、どっしり安心感がある。ヤスオに血野滉修(何と読むのか不明)、キョウコに江口。随所に脱力系力み系ギャグ硬軟様々取り交ぜて提供。白痴っぽい要素のあるキョウコの色気と色気の無さ境界ギリギリを江口がさらりと演じ、芸人風情のゲサクは冗談寄りだが冗談顔がふと真顔に見えなくない男の背中。超人的役柄であるヤスオ(ヤソ)の「存在から冗談」(笑われキャラ)を時に逆手に取った役者顔を見せつつも、現世的関心を捨てた超越性を信じさせる風情。上演一時間余、3人のアンサンブルがまだ続いてほしく思える舞台であった。
無人のコンピューター制御システムでミサイルが飛び交う世界を、芝居のラスト、ヤスオが目指したというエルサレムへか、はたまた何処へか紙吹雪の中をリヤカーで一足一足行くゲサクとキョウコの姿が胸に迫る。(乾電池の芝居なのに感動してるオレって・・)