終夜 公演情報 風姿花伝プロデュース「終夜」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    予定上演時間4時間半とチラシにあるのを見て、敬遠していたが、クチコミが絶賛しているので観劇。上演時間も3時間50分(休憩2回込み)まで刈り込んだということなので敷居が大分下がった(10月20日の公演は3時間40分と張り紙してあり、実際そのとおりだった)。疎遠な兄(医師=岡村健一)と弟(建築エンジニア=斉藤直樹)の、ふた組の中年夫婦の、緻密な会話劇。かなりエキセントリックな人格攻撃(とくに兄の二度目の妻から=栗田桃子)もあるし、露骨なセックスの要求もあるなど、普段は表に出ない心の闇を描いていた。

    俳優は、不倫で自分を取り戻した弟の妻(那須佐代子)ふくめ熱演、好演で、ひきつけられた。とくに岡本健一の安定した存在感が、泣き、怒り、喚く感情の振幅の激しいこの芝居全体をしっかり下支えしている。会話劇だが、俳優の所作がオーバーなくらいに大きく弾ける場面があり、単調にならずにいた。客席も笑ったり、どよめいたり、結構反応があった。

    ただ、やはり長い。前半1時間半は夫婦の会話も手探りで、見ている方も手探りで特に疲れた。最近、ベルイマンの「リハーサルの後に」も見て、北欧の戦後演劇は、男女の心理を緻密に解剖するのに長けている気がする。ストリンドベリ以来の伝統だろうか。それはそれでいいのだが、かつてのイプセンに代表される社会批判が失われてしまっている。小林多喜二がデビュー前に「思想的に最も感動した」という、ボーヤーの小説「現代人の悩み」の正義と挫折への深い洞察はどこへ行ってしまったのか。そこが、この長い芝居の最大の不満だった。

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    2019/10/21 08:58

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