満足度★★★★
戦争末期、特製防空壕の中でシャンパンを飲みながら敗戦後の保身を考える皇族と、下町の靴職人一家。対照的ともいえる二つの場が、靴職人が南朝の血をひく「正統な皇位継承者」ではないかということから、結び付き、笑いと悲喜劇をまきおこす。中心は皇族将校(葛西和雄)と人騒がせな南朝信奉将校(吉村直)、靴職人(島本真治)と妻(藤木久美子)で、ユーモアと生活感のある演技でよかった。
劇の骨格は以上の通りだが、飯沢匡の面白いところは、この周囲の脇役が彩り豊かで、劇にリアリティーを与えているところ。宮様を頼ってくる、元芸者、世間知らずの皇族の子供たち。あるいは、下町の隣組会長、小学校の教頭。「戦争は負ける」と公言する靴職人を最初は非国民呼ばわりし、ふんぞり返っていたが、「南朝の子孫?」という噂が聞こえてきて、当惑しつつ卑屈にふるまう面白さはたまらない。
劇団だからこそできる総勢23人の出演者による総力戦だった。休憩15分を挟む3時間5分。始まったのが19時なので、終わると22時過ぎと、かなりハードだが、見ている間は笑えてドキドキして退屈しない。それだけの時間をかける値打ちのある舞台だった。