満足度★★★★
最近は、公共劇場が競って優れた劇団劇作家の発掘に力を入れている。この公演は池袋の東京芸術劇場の「芸劇eyes & eyes plus 2019」の今年の第一弾で、選ばれた5団体の一つだ。こういう場では、青年団系の劇団が、企画書も素材の選択もうまいのでよく見かけるが、この贅沢貧乏と言う劇団も、活動も作品もこの系列だ。
ヨガ教室のある住宅地に入り込んできた野獣(狸とかイタチとか)に、住民たちがどう対処するか、という話が軸だ。広くマットを敷いた四角な舞台を客席が囲み、ノーセットで芝居と、舞台を広く使ったダンスで物語は進む。動物と人間の関係とか、住民間の意識の対立とか、若い世代の労働意識とか、自然回帰への憧れ風俗とか、よくある話、よくある議論、で格別新鮮さはないが、目先、ダンス風の動きとテンポの良さで引っ張っていく。1時間35分。
物語も、その場所を支える清掃員の労働者青年男女に収斂していくように旨く作っているし、振り付けも無駄がない。役者もそつがない。まとまっているのが却って、現代の若者の、傍観するだけで、何事にも無関心という風俗を映している。そこが面白いかと問われれば、さして惹かれることもないが。
昔の小劇場は、旗揚げも大変なら、その維持も大変で、みな血眼でやったものだが、そういう荒々しさが生む演劇の人間的な面白さはない。お利口さんだなぁという印象だが、そこが現代の小劇場で評価されるところなのだろう。