満足度★★★★
鑑賞日2019/09/05 (木) 13:30
座席1列24番
クロアチアを舞台にした女性6人、4代にわたる(2人姉妹が2組)サーガ。
1945年―戦後、1900年-ユーゴ内戦、2011年―EU加盟という3つの節目に焦点を当て、彼女たちそれぞれの生き様(価値観)を描いていく。
開幕、パルチザンの戦士として戦い将軍の恩恵を受けるローズが、軍本部に行き、戦後、親ドイツ(ナチス)派の富裕層から没収し、空き家になった住居の割り当てを受けに来る。舞台奥には、夥しい鍵の山のオブジェ。その中から1つの鍵を選び出すが、それは以前母親が、召使いとして働いていた家だった。そこに、ローズは母モニカと夫アレキサンダー、そして生後間もない娘のマーシャと暮し出す。しかし、そこには元の住人で、精神病院に入れられていた令嬢のカロリーナが、終戦のどさくさに紛れて戻り住んでいた。
最後、マーシャの次女ルツィアの結婚式、花嫁衣裳のルツィアと父ヴラドが楽しそうに皆の前でダンスを踊って閉幕。
舞台の進行は、全てローズが選んだ(意図的にだと思われる)家の2階で進行する。(1階と3階には、別の家族が住んでいる)ただ、時系列ではない。最初と最後だけが時系列のかなめになっているが、先の3つの時期が交錯する。
この舞台の素晴らしいところは、同居するカロリーナを含めた7人を、複眼的な視点・視野から過不足なく描き切っているというところ。舞台劇では難しい価値の多極化に(散漫になりやすい)無理なく成功している。
クロアチアという歴史の大河に漂う小国の運命を反映させながら、反発と家族愛を深める群像劇は休憩含め3時間を飽きさせない。
特にローザの苛烈な生き様は、舞台前半を鷲掴むように引っ張っていく。ラスト近くのアリサの家族への糾弾は、まさにローザ譲りという感も強いし、ローザの妹ルツィアのしたたかさも、ローザ譲りと言えよう。(隔世遺伝だね)
舞台奥に置かれ続ける夥しい鍵の山のオブジェは、幾つもの選択肢を眼前にした彼女たち人生の象徴なのだろう。
ただ、半世紀を超える物語だ。1945年しか出てこないローザとモニカはいいが、1945年と1990年を跨ぐカロリーナは、どうしても容姿的な制約が出てくる、寺田路恵は好演だったが、1945年で「お嬢様」と言われるのはちょと厳しい。でも、彼女は1990年にルツィアの価値観を決める大事な役どころだしなあ。若ければよいというものでもないが。