満足度★★★★
鑑賞日2019/06/06 (木) 14:00
座席1階
この井上戯曲、初めて拝見した。
いずれも大衆演劇の座長役としての一人舞台。すべてがおそらく、役者の選択で決まる舞台だ。最初に登場する女座長を有森也実、次いで出てくる男座長を内野聖陽が演じた。
有森也実がサラシを巻いて肌をあらわにたんかを切る、という場面にドキドキしてしまった。こういう役に挑戦したその心意気を買いたい。ただ、今日のマチネは声の調子が今ひとつだったのか、若干かすれ声で、客席から「頑張れ!」と応援したくなるようなか弱さが邪魔をした。
後段の内野聖陽の物語と直接つながりはないが、何となく二つの舞台を結び付ける糸のようなものが引いてある。それはラストシーンで結ばれることになるのだが、その演出はちょっとアングラ演劇っぽくて好きです。
内野聖陽は迫力があったが、ややかっこよさというかスマートさが前に出てた感じ。もっと泥くさいところがあったら、さらによかったと思う。
いずれもの楽屋も、ライトの当て方を工夫してうまく演出してあった。客席を挟んで大きな鏡があるという設定で有森と内野が化粧をするのだが、本当に鏡があると錯覚させられる秀逸の演技だった。
舞台美術に力が入っていて、この舞台を最大限に盛り上げている。若い世代が集まる現代演劇の世界からは遠く離れた、昭和の演劇の姿を楽しみたい。