満足度★★★
冒頭は東京、荒川沿い。一平が妻を殺したという告白から始まり、「僕の少年時代は7歳で終わった」と、50年前の東京五輪のころ、九州の山村の旧家の大家族の話に飛ぶ。殺された妻も常に舞台の隅にいて、夫の7歳の時の体験を見ることになる。
そこは、祖父の大旦那が林業で成功して人財産を築いたが、今は長男が後を継ぎ、林業も斜陽が始まり、家族関係もギクシャクし始めていた。一平の父は次男で家業を手伝い、、三男は中学校教師である。隠居しても精力的で圧倒的な存在感のある1代目と、善良だが小人物の2代目の三兄弟。そして、いつも母親の陰に隠れている3代目の幼い一平。代が下るほど生活力を失っていく構図は「ブッデンブローグ家」のようだと、これは後で気づいたことである。
原田大二郎が破天荒な1代目を生き生き演じていた。客演の斉藤とも子が祖父の後妻として、この崩れそうな旧家を支える気丈な女性を演じて貫禄があった。個人的感想としては「黄色い叫び」よりよかった。一平役の稲葉能敬は、少年時代はずっと、黄色い帽子を目深にかぶり、感情を見せないナレーター役で影のような存在だったが、このナレーターがメリハリがあってよかった。
旧家の素朴な人たちのズレと諍いが、時にユーモラスに時に力強く演じられる。どこに感情移入してみるか、多焦点のドラマでモヤモヤした。ただ、愛していながら、愛がうまく伝わらない、自分の思いとは全く違うことをしてしまう、人間の切なさ、悲しさが最後には残った。