獣の柱 公演情報 イキウメ「獣の柱」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    あまたある小劇場の中でも、イキウメの舞台では、他の追従を許さないファンタジックな世界が展開する。
    現代の身の回りにある事柄が、何か突然消失する。あるいはまったく未知の事象が発生する。それが普段の生活時間の流れの中で当然のように起きる。誰も説明できない。言葉が消失する「散歩する侵略者」が前者の代表とすれば、「獣の柱」は後者のドラマ。
    今世紀初頭、地方の山村に隕石が降り、それを拾い、見たものは、無上の幸福感を感じる。五十年後(近未来)、巨大な柱が次々に大都市に降ってくる。光を放つその柱を見たものも幸福感に包まれる。高齢者の安楽死にふさわしい装置だという意見もある中、多くの大都市の市民は地方に避難してくる。最初に隕石を拾った村では、自然循環農法で成功しているが、難民を引きうける力はない。寓意があるようでいながら錯綜していて、さまざまな見方もできるファンタジーで、人間ドラマ、社会ドラマ、と簡単に[教訓」で括れないところがいい。とにかく物語は面白く進む。
    一段と磨きのかかった再演で、充実した舞台になった。イキウメの初期からの出演者が、その独自の舞台のカラーを支えてきたが、この再演では、市川しんぺーや松岡依都美が加わって、舞台が骨太になった。東野洵香という新人も新風だ。
    内容はファンタジーだが、観客が日々、日常の中で経験している「変化についていけない」時代ならではのリアリティもあって、今回はほぼ一月、三十回を越える公演だが、私が見た回は若い観客も多く、満席だった。
    前川のファンタジーは、次々に量産すれば薄味になってしまうので、このように改訂再演で密度を上げ、時代に沿っていくのは歓迎である。小劇場界でも再演を評価するようになったのは、成熟のしるしでもある。2時間10分。

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    2019/05/17 23:30

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