満足度★★★★
ほぼ二十年ぶりの再演だそうだが、タイミングのいい祝祭劇になった。
ピカソとアインシュタインが青年期に出あった、という架空の史実の上に、ニ十世紀始まったばかりのパリのカフェを舞台として、いかにもアメリカの作家らしい(またコメディアンでもあるらしい)面白がり方で、理系、芸術系の両天才の取り合わせを楽しむエンタティメントである。現代にも通じるニ十世紀の大きなテーマに、技術か、芸術かと言う事があるが、この芝居では、あまりそこは突っ込まず、一つの世紀を共有した人間が星降る夜を見上げて、きたり来る新世紀に思いをはせるという趣向になっている。このラストへの積み上げはよく出来ていて、いい気分の中で幕が下りる。
アメリカ的な能天気、という人も多いだろうが、日本の年号が変わる空気の中で、ちょっとセンチに時代に思いをはせるにはもってこいの芝居である。複雑なダブルキャストが組まれているが、川平アインシュタイン、岡本ピカソ、で見た。若い頃の実在人物は見たことがないが、必ずしも柄があっていない二人は大いに健闘している。ことに岡本は旨い。川平はヘンに深刻にならないのはいいが、女性に接するときなどもっと工夫が欲しい。脇も結構厚いが、女優陣は今少しお行儀が悪くてもいいのではないか、若者集まるパリの自堕落さがほとんどない。
この読売新聞のホールはなかなか立派で、これからも貸しホールで使っていくのだろうが、場内音声ミキサーの熟練が欲しい。ホールの特性もあってすぐにはできないだろうが、いまは音も声も「拡大」しているだけで芸がない。