私のアンテナにトム・ストッパードが続けて飛び込んで来たので、何かの縁と観ることにした。最初はチケットが完売だったのだが、タイミング良く関係者席開放分が買えて、会場の前後左右ほぼ中央の席に座ることができた。
舞台の前方中央は階段状になっていて、左右に2階建ての細い監視塔のようなものがある。奥には薄暗い照明の中に35人のオーケストラが鎮座している。この階段状の場所で主に二人の男が寝起きし、語り合い、診察され、小突かれる。他に4人の俳優と7人のアンサンブルが出演する(7人はドレミファソラシの7音に対応するのかも)。
場所は1970年代のソ連の精神病院。男の一人アレクサンドル(・イワノフ)は反政府運動をするのは気が狂っているからだとして収容(収監)された。現在はハンスト中である。もう一人の男(アレクサンドル・)イワノフは頭の中にオーケストラを所有していてそれが頻繁に演奏しているという。その頭の中として舞台上に本物のオーケストラを用意するという贅沢な演出になっている。1970年にはソルジェニーツィンが「収容所群島」などでノーベル文学賞をとっている。そしてこの作品の初演は1977年のロンドンである。ちなみにソ連の崩壊は1991年の12月であった。
さて、アレクサンドルが収監されている理由はそのままの意味であろう。対してイワノフの病気は観客の頭というフィルターを通すことで本当の姿が現れてくる。そこで私はいくつかの問を立ててみた。
問題 この舞台を観て以下の問に簡潔に答えよ。
問1 二人の名前が同じ(アレクサンドル・イワノフ)、さらにアレクサンドルの娘も同じ名前を名乗ることの意味は?
問2 楽器を弾くということの意味は?
問3 オーケストラ、指揮者は何の象徴なのか?
問4 担当医がオーケストラの一員であることの意味は?
問5 大佐はなぜ二人を放免したのか?
問6 アレクサンドルの最後の行動の意味は?
私の解答(解釈、こじつけ)はネタバレに。
上演時間75分料金10,000円は80分8,000円の「出口なし」よりも単純なコスパは更に悪い(笑)。もちろん人件費を含む経費がまるで違うから当然ではある。
中身がチンプンカンプンであるおそれがあったので、開演前にパンフレット(B5変形版、モノクロ、64ページ+ハードカバー、2,000円)を買った。ちょっと散財感がするが内容豊富で読みごたえがある。
題名の「every good boy deserves favor」は、HPにもあるように、頭文字EGBDFが5線譜の各線上の音名を表していて、それを覚えるための慣用句だという。また The Moody Blues の1971年のアルバムのタイトルでもある。そして普通の言葉としての意味は本作の内容の一面を表している。