血のように真っ赤な夕陽 公演情報 劇団俳優座「血のように真っ赤な夕陽」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    満蒙開拓団の悲劇だが、あえて辛口で言わせてもらえば甘い。主人公たちは善意の開拓団で、「満人」から慕われ、敗戦後の窮地を助けられる。こういう開拓団もあったのだろうが、幸福な例外だったろう。満人を差別的に扱い約束も守らない傲慢な開拓団や、集団自決で全滅した開拓団の話も出てくるが、隣の開拓団の話として、伝聞でしかない物足りなさは残る。(ただ、それを舞台で血みどろで演じるのがいいか、というのはまた別の話であることも分かる)

    最初に不満を書いたが、いいところももちろんたくさんある。「誰か故郷を思わざる」の歌は聞いていて、しみじみした。ベテラン岩崎加根子もよかった。特に、体を張って満洲人を守るところ、集団自決に思いつめた仲間をひとまず和ませるところ。集団自決で同胞を殺してきた役の、谷部央年のすごみはまさに鬼気迫った。満洲人のリーダー役の渡辺聡も、被支配民族の苦しい立場と誇りをよく演じていた。

    30万人の開拓団のうち9万人が犠牲になった(27万人中8万人犠牲という説もある)、そのうち1万が集団自決という。同じ満洲でも都市部の日本人とはレベルの違う、開拓団の悲劇の構造と政府・軍の責任があぶりだされていた。藤原てい「流れる星は生きている」なかにし礼「赤い月」など、引き揚げ体験を書き記す人は、都市にいたインテリ層(あるいはその子弟)が多い。そういう点でも、改めて満蒙開拓団の悲劇を現代の観客に追体験させた意味は大きい。

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    2019/03/24 08:52

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