血のように真っ赤な夕陽 公演情報 劇団俳優座「血のように真っ赤な夕陽」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    これはこれでよく出来ていると思う。
    第二次大戦期の満州開拓団の素材、俳優座の公演、古川健の書き下ろし戯曲。
    この組み合わせで何か新しい舞台成果を上げることは、出来そうで実は、不可能なことなのだ。そこが演劇なのだとも言えよう。
    素材から、民族を越えた平和と融和をという絶対的なテーマ。日本の現代劇を背負ってきたと自負する層の厚い劇団の実力。現代劇の新しい書き手として最も実績実力のある作者。
    満点のものだけを掛け合わせても、それ以上のものは出るべくもなく、それぞれの要素は空しく空中分解しているが、掛け合わせたらどうにかなると考える方が無理難題だろう。現実の舞台では、現在も大きな問題になっている近隣諸国の民族近親憎悪の融和が美しく描かれ、俳優たちは見事な発声とそつのない演技でその世界を表現し、作者はほとんどの席を埋める高年齢の観客の紅涙を、事実に基ずく物語の上に仕組んでいく。
    80歳代も半ばになるだろう、しっかり舞台を務めた岩崎加根子を先頭にカーテンコールで俳優たちが並ぶと、一種の感動がある。俳優陣の年齢的な広がり、粒ぞろいのその力量、若い俳優もとにかく柄も演技もそつがない。こんな素晴らしい俳優たちを持ち、新進の第一人者の作者を起用してこういう芝居にしかできないのは本当に勿体ない。
    演劇が集団で作るものである以上、劇団というものは有効なものであろう。これはこれでいいとする劇団の空洞化が、日本の現代劇を貧しいものにしている。

    0

    2019/03/23 12:02

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大