満足度★★★★
数年前の三鷹でのiaku版は細密度の高い演出で、屠場だけに(控え室ではあるが)照明も暗くじっくり観る芝居だったが、こちらは打って変わったトーンである。照明がまず明るい。如何にも現代の「食肉センター」らしく、清潔感のあるPタイル様の床、ロッカーにテーブル。711の使い方では、私が観た中で随一。確かにこの劇場は狭く、やる側としては出来れば装置は簡略化したい所だろうが、役者は三人、やはりこの芝居では具象がほしくなる。
さて弁明。この日も体調万全でなく(最近そればかり)、そうすると頭の中のiaku版をいつしかなぞっていて待った反応が返って来ない、といって軌道修正の余力なし、結果筋を見失ってうつらうつら。
中盤以降は明快を旨とするハイリンドの本領が我が耳にも届き、追い駆けた。改めてよく出来た脚本、そんな作品には役者を焚き付けるものがある、という事が判る、というか判らせてくれるハイリンド、でもあるか。ハイリンド舞台は直球でポップ志向にも見えるが、既成戯曲の上演主体だけに芝居には逆らわない(自分都合で芝居をしない)、従って今回の作品の「毒」も、いつしか体現している訳なのである。
男の三人芝居ゆえ、枝元女史はこの度は受付周りの立ち回り。演劇関係者(小劇場系女優)の姿もちらほら、注目度が窺えた。