満足度★★★★
初めてライブビューイングなるシステムで、冒頭は欠けたが何とか「観劇」にこぎ着けた。40~50人位の「観客」のうち、98%が女性(恐らくたいはんが主婦)。2%が私。映画館の画面ではアップもあって見やすく迫力もあるが、撮られた画(たとえ生でも)と判る映像では1枚壁を隔てた感じを否めず、熱量は伝わらない。終演しても拍手は起きない(多分外国なら起きる。根拠はないが)。逆に定点で撮影し、遠慮がちにパンやズームを使う程度なら、違ったか・・これも判らないが、「制約」の中で観ている共感が醸成されたかも・・だがそれだとチケット代に不服が漏れそう、そもそもDVD化を兼ねての撮影だろうし、云々とあれこれ考えた。
終演後の挨拶で日韓合作という文句を主役の浦(あれなんだったっけ)氏が連呼していたが、手練れの韓国人俳優たちも存在感を示す。日本語でも喋るが時折韓国語で喋り、そこであの韓流コメディ特有の甘えっぽく「文句を言う」抑揚が耳に入った時、韓流流行りの全盛期とは違って聴こえるのを感知。
韓流モードで聞けば笑えただろうが、笑いに繋げる表現、そのモードを作る難しさや、表現の彼我の違いを超える事、などについてふと考えた。米国式のらしい(振りの多い)表現というものもあるが、果して押し並べてそうなのか、万国共通普遍の表現とは、とか。。
考える余地が生まれるというのも、ライブビューイングならでは?などと「考え」たり。
韓国人演出家のとにかくも才気を感じさせる箇所が随所にあり、個人的には辻田暁の舞いがかくも秀逸に舞台上に嵌め込まれていて嬉しく、両国ともに魅力ある俳優の見せ場があり、ペール・ギュントの旅というフォームを借りた大々的見世物小屋の様相。
ペールの旅は最後に望ましい場所へ導かれる旅ではない。近代演劇の祖イプセンの異色の作品だが、どことなくの作者自身の人生を老境にあって見つめた作品に感じられて来る(何歳に書いたかは知らない)。人間の生き方を厳しく問うイプセンはそこにはなく、「お前は何者であった(あり続けた)のか」と問われて答えられない老いたペールを、否定も肯定もせず、優しく結末へと誘っていた。