暮れゆく箱庭の中で 公演情報 PAPADOG「暮れゆく箱庭の中で」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    タイトルやチラシは叙情豊かな感じを思わせるが、内容は難解にも思えるような。人によって解釈や楽しめ方が分かれそうな作品ではないだろうか。
    正気と狂気を行き来するような展開の先にあるのは…。
    (上演時間1時間20分)

    ネタバレBOX

    舞台は素舞台に近く、クッションのような椅子が数個あるのみ。
    物語は1人の少女が学校(教室)から帰らないため、男子生徒が一緒の帰宅を促す。何回か同じようなシーンが繰り返され、その合間に学校の風紀委員なる者たちが自己アピールを兼ねたパフォーマンスをする。このシーンが冗長に思え、劇全体のコンセプトや雰囲気を曖昧にしていたようだ。

    登場人物はクラスメイトと担任教師と先に記した風紀委員(3人)である。ラスト近くに解ってくるが、それまでの内容は主人公自身の経験・投影した姿のようでもある。劇中で語られる分身(ドッペルゲンガー)であるとすれば、現在と過去のバージョンがお互いを照らし二重人格的な描き方になっている。一方、現世ではなく、苦悩・苦痛からの逃避を試み臨死的な世界にいるとすれば、自分自身を別の場所から俯瞰しているとも思える。”こちらの世界へ”という台詞が意味深であった。
    一つの舞台からこれだけ解釈・印象の異なる作品を作っている手腕は素晴らしい。人の底深さ、底知れなさを覗いたようで少し不気味に思った。

    具体的には少女・朱音(天野麻菜サン)の心の嘆き、その流れを静かに受け止めているが、いつの間にかぐにゃりと歪められてくる怖さ。クラスの男子生徒・蒼太(石田達成サン)が親から虐待を受ける、女子生徒・真白(鶴田まこサン)が担任との不倫やその過程で起こる援助交際などは、朱音自身の体験か妄想か?一種のサスペンス風に展開しているところは面白い。ラストは、先に記したような朱音の脳内をあたかも現実のように表現させて行く。それまで見たシーンを幾層にも絡め深層の世界に誘い込むような感覚にさせる。

    しかし、描きたい内容をある程度ストレートというか素直に展開させなければ、観客にその意図は十分伝わらないと思う。例えば、シリアスなシーンと風紀委員のコミカルなシーンが交互というのはどうだろうか?緩衝と緊密の落差狙いであれば、ワンパターンの多様で冗長であり違和感を覚えたのは残念。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/12/06 11:00

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