満足度★★★★★
鑑賞日2017/09/18 (月) 14:00
劇団チョコレートケーキの古川健さんは、歴史の舞台を切り取る演劇脚本では定評がある。今回、見に行った動機の一つは古川作品であるからだし、同劇団の日沢雄介さんの演出というのもある。
舞台は東ドイツ崩壊の前夜。一般家庭であるが、夫は秘密警察シュタージの幹部であり、妻は一般住民を監視する役目を夫から請け負っている。普通の人が普通の人を監視するという世の中は、珍しくない。日本では秘密保護法や安全保障関連法案ができても戦前の密告社会には戻らないだろう、と言う人は多いが、この舞台で描かれている悲劇は、昭和から平成に変わる直前の東ドイツでの出来事だ。日本人だけが「歴史の過ちは繰り返さない」と言い切れるはずはなく、そのあたりをこの舞台は訴えかけている。
二つのステージを切り取って2画面テレビのように連続していくテンポのいいステージだ。東独の歴史を知らなければ少し難解かもしれないが、分かりやすい舞台であることは、客層がかなり若いことからも証明できる。
主役のマリアを演じた落合るみさんの迫真の演技は涙を誘う。全身を振るわせて恐怖する瞬間を実に見事にやり切っている。女優主体で物語は動くのだが、シュタージの非正規雇用職員ララを演じた舘田悠悠さんも出色であった。